会社員の場合、毎月の給料から健康保険料と厚生年金保険料が天引きされます。毎月のことなのであまり気にしていないかもしれませんが、これらの保険料がどのように算出されているかご存じでしょうか?今回は、社会保険料がどのように決定されるかお伝えします。
この時期だから知っておきたい!
社会保険料はどうやって決まる?
2021年3月3日
社会保険料決定のしくみ
社会保険料は、4月~6月に支給された給料の総額を3で割った報酬月額を元に「標準報酬月額」を決定し、社会保険料額表に当てはめて算出します。これを、勤務先の担当者が「算定基礎届」に記入し、日本年金機構や健康保険組合などに提出すると社会保険料が改定され、その年の9月分から翌年8月分まで適用されます。では、もう少し詳しく注意点を見ていきましょう。
標準報酬月額に含まれるもの
標準報酬月額には、基本給はもちろん、家族手当や住宅手当、役職手当、時間外手当、通勤手当など、勤務先から現金または現物で支給されるものすべてが含まれます。通勤手当については、税金上1カ月あたり15万円まで非課税とされているので誤解が多い部分ですが、標準報酬月額には含まれますので注意してください。
なお、各種祝い金や見舞金、年3回以下の賞与や退職金、出張旅費などは標準報酬月額には含まれません。
給与の締め日と支給日
社会保険料は、4月~6月に支給された報酬の総額を元に算出されるとお伝えしました。ここで注意していただきたいのは、あくまで支給された金額であるということ。企業によって、給与の支払いは月末締めの翌月25日であったり、基本給は当月支払いだが残業分は翌月支給であったりなど、それぞれの規程があります。このタイミングの違いが影響するということを認識し、あらためて給与規程を確認しておくと安心ですね。
社会保険料額表の見方
厚生年金の場合、全国一律の「厚生年金保険料額表」を用いており、1等級から32等級に分けて保険料が決められています。健康保険については、協会けんぽか健康保険組合かによっても保険料率が異なりますが、基本的には1等級から50等級に分けられていますので、保険料額表の見方そのものは同じです。
では、ひとつ例を挙げてみましょう。東京都内の事業所で働く30歳、3カ月の平均報酬額が29万円、協会けんぽに加入している人のケースです。保険料額表では、標準月額が29万円以上31万円未満の場合、標準報酬月額は30万円になり、健康保険は22等級、年金保険は19等級に該当します。この場合の健康保険料は14,805円、年金保険料は27,450円ということになり、基本的には1年間この保険料が適用されるというわけです。
では、もしも3カ月の平均給与があと1,000円少なかったらどうでしょうか。この場合の標準報酬月額は28万円となり、健康保険料は13,818円、年金保険料は25,620円ですので、毎月2,817円の差額が発生します。このように、1,000円の違いで社会保険料が変わることがあるというのは事実で、この点が「この時期に残業するのは損」と言われてしまう原因なのかもしれませんね。
社会保険料が変更になるのはどんなとき?
算定基礎届によって、その年の9月分から翌年8月の社会保険料が決定するとお伝えしましたが、この期間内であっても変更が生じることがあります。たとえば、基本給や通勤手当が変動したケースや、役職手当てが加算されるようになったケースなどです。ただし、社会保険料額表で2等級以上の変動とならない場合には、標準報酬月額が変更になることはありません。
先ほどのケースを例にしてみましょう。標準報酬月額が30万円、健康保険は22等級、年金保険は19等級だった人が2等級上がるとしたら、それぞれ24等級と21等級になります。しかし、この場合の報酬月額は33万円以上35万円未満ですので、毎月の固定給が4万円以上増えなければ2等級も上がらないとも言い換えられます。元々の等級によってもこの差はありますが、よほど大きな変動がなければ、基本的には算定基礎届で決定された社会保険料が1年間適用されるものと思っていいかもしれませんね。
なお、育休等により2等級以上の変動がある場合には、変更後4カ月目に勤務先の担当者が「月額変更届」を提出することで新しい保険料が適用されることになります。
今回は、社会保険料決定のしくみについてお伝えしました。何となく「標準報酬月額に影響がある時期に残業をするのは損なのでは?」と感じている方もいるかもしれませんが、等級が上がるということは、その分保険料を多く納めるということです。つまりは、将来の年金受給額が増えることにつながりますし、病気やケガで休んだ際の「傷病手当金」の給付額も増えるということになりますので、マイナスイメージだけを持たないようにしてくださいね。そして、この機会に、あらためて自分の勤務先の給与締め日や支給日について確認をしていただくきっかけなればと思います。
(※本ページに記載されている情報は2021年2月18日時点のものです。)