今や、多くの人が知っている高額療養費制度の存在。確かに、高額の医療費がかかるときにはありがたい制度ですね。しかし、高額療養費制度があれば安心というわけではありません。そこで今回は、高額療養費制度を利用できる条件についてお伝えします。
高額療養費制度があるから安心?
意外と知らない落とし穴に要注意
2020年11月16日
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、医療機関などで支払う医療費が同一月に一定額を超えた場合、その超えた分を後日払い戻してもらえるというものです。その一定額とは、年齢が70歳以上か未満かによって違いがあり、収入によっても5段階に分けられています。
たとえば、69歳以下で年収が約370万円~約770万円の人の場合、自己負担の限度額は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」で算出されます。
では、この条件に当てはまる人の医療費が100万円かかったとしましょう。その場合の計算式は、「80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%」です。答えは87,430円ですね。つまり、69歳以下で年収が約370万円~約770万円の人の自己負担上限額は87,430円。これを超えた分については、払い戻してもらえるということになります。ケガや病気で大きな不安を抱えている状況では、とてもありがたい制度だということがわかりますね。
高額療養費制度の落とし穴とは?
ケガや病気で医療費が高くなるときに頼りになるのが高額療養費制度ですが、実は必ずしも完璧に助けてくれるとは限りません。そこで、高額療養費の落とし穴として知っておきたいポイントをお伝えしていきましょう。
対象になるのは健康保険が適用される範囲内
ケガや病気で入院や手術が必要になった場合、医療機関から請求される医療費の中には、健康保険が適用されないものも含まれています。
例えば入院中の食事代や差額ベッド代、先進医療の技術料などです。差額ベッド代とは、いわゆる個室、もしくは少人数の部屋を確保する際に発生する費用で、1日あたり数千円、場合によっては1万円を超えることもあります。
また、先進医療については、その内容によって数百万円を超えることも。しかし、いずれも健康保険の適用外ですので、高額療養費制度は適用されないものと認識しておいてくださいね。
1ヵ月という計算期間
高額療養費制度を利用すれば安心とは言えない理由の一つに、自己負担上限額の算出期間があります。具体的には、高額療養費制度は1ヵ月単位での適用であり、それも、毎月1日から末日で区切られているということ。69歳以下で年収が約370万円~約770万円の人の自己負担上限額は87,430円だからといって、何ヶ月にも渡って自己負担額が87,430円というわけではありません。月を跨いでしまった場合には、それぞれの月で上限額の負担が発生することもあるということを理解しておきましょう。
世帯合算できる条件
高額療養費制度は、世帯合算できます。世帯合算とは、家族の誰かが一つの医療機関で入院と外来を受診した場合や、同じ月に複数の医療機関を受診した場合、または家族の複数名が別々の医療機関を受診した場合に、それぞれの医療費を合算できるというものです。何となく「かなり使える制度」という印象をお持ちになるかもしれませんが、世帯合算するためには条件があります。
まず、合算しようとする家族が同じ健康保険に加入していること。たとえば、家族全員が世帯主の扶養の範囲であれば合算はできますが、たとえば夫婦共働きでそれぞれに健康保険に加入しているような場合には合算はできません。
また、69歳以下の場合には、合算できる自己負担額が21,000円以上のものに限られます。一般的に考えて、同時期に家族の中で21,000円以上の自己負担が発生する通院や入院をすることはなかなかないかもしれませんので、この点もしっかり理解しておきましょう。
払いすぎた医療費が戻るまでの期間
高額療養費制度を利用して医療費を返還してもらう場合、医療機関から提出される診療報酬明細書の審査が必要なため、実際に払い戻されるまでに3ヵ月以上かかるのが一般的です。お金に余裕があるのであれば心配いりませんが、返還されるまでには時間がかかるものと認識しておいたほうがよいでしょう。
医療費が高額になるとわかったら
高額療養費制度は、自己負担額を超えて支払った医療費を、後日申請することで返還してもらうというものです。つまり、一旦は自分で立て替える必要があります。そこで、「医療費が高額になるかも?」という状況になったら、先に「限度額適用認定証」の申請をおすすめします。
「限度額適用認定証」は、医療機関に提示することで、最初から高額療養費制度が適用されているときと同じ自己負担限度額内で支払えばいいというものです。医療費を立て替える心配もありませんので、ぜひ活用してください。
今回は、高額療養費制度についてお伝えしました。いざというときに心強い制度ですが、ご自分の自己負担上限額や世帯合算の可否などについて、この機会に調べてみてくださいね。そして、もし医療費が高額になるかもという状況になったら、限度額適用認定証の申請をすることをおすすめします。
(※本ページに記載されている情報は2020年11月16日時点のものです)