1年間に支払った医療費の金額によっては、確定申告をすることで所得税が還付される医療費控除。病気やケガで高額の医療費を支払った人にはありがたい制度の一つです。しかし、残念ながらすべての医療費が控除の対象になるわけではありません。そこで今回は、医療費控除の対象になるものとならないものについてお伝えします。
医療費控除の対象に
なるもの・ならないものは?
2020年7月13日
医療費控除とは?
医療費控除の対象になるものとならないものをお伝えする前に、まずは医療費控除について確認しておきましょう。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が一定の金額を超えた場合に、その超えた分に対しての所得控除が受けられるという制度です。自分はもちろん、自分と生計を一にする親族の医療費が対象となり、その全員分の医療費合計が10万円を超えた場合に適用されます。
ただし、個人が契約している生命保険や健康保険の高額療養費制度などで医療費の一部が補填された場合、その分は医療費から差し引かなければなりませんので注意してください。なお、総所得金額等が200万円未満の場合には、医療費が10万円を超えていなくても、総所得金額等の5%を超えれば医療費控除の対象となります。
そして、医療費控除は確定申告をしないと受けられないという点も重要です。一般的に、サラリーマンの場合は勤務先で年末調整をしてもらっています。毎年、11月くらいになると勤務先に生命保険料控除証明書などを提出して、その年に支払った所得税を精算してもらうのでご存じの方も多いでしょう。しかし、残念ながら年末調整で医療費控除は申請できませんので、年が明けてから自分で確定申告する必要があります。
また、所得控除が受けられるということは住民税にも影響することでもありますので、対象となる場合には面倒がらずに確定申告をするようにしましょう。
どんな医療費なら控除対象になる?
医療費控除とは、医療費が一定の額を超えた場合に適用される制度だとお伝えしましたが、医療に関係していればすべて対象になるわけではありません。そこで、どんな医療費であれば控除の対象になるのか、基本的な考え方を確認しておきましょう。
医療費控除の対象になるのは?
医療費控除の対象になるのは、病気やケガの治療、出産などを目的とした入院費用や交通費、食事代、薬代などです。義手や義足、義歯、松葉杖や補聴器、コルセット、眼鏡などの購入費用なども対象となり、出産費用に関しては、妊娠後の定期検診や助産師による分娩の介助にかかる費用も含まれます。
また、治療のためにドラッグストアなどで購入した市販薬も対象ですし、痛みを改善するためのマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術も含まれます。
医療費控除の対象にならないのは?
医療費として病院の窓口で支払ったとしても、直接的に病気やケガの治療などに関連していないものは医療費控除の対象にはなりません。たとえば、自己都合で発生した差額ベッド代、ビタミン剤などのサプリメント代、健康診断の費用などです。つまり、健康を維持するため、あるいは病気を予防するための費用は対象にはならないということですね。
そのほか、単に疲労改善を目的としたマッサージ治療なども対象となりませんし、医師や保健師、看護師などに支払う本来の対価以外の謝礼金も対象外です。また、通院のための交通費は医療費控除に含まれるとお伝えしましたが、自家用車を使う際の駐車場代やガソリン代は対象にはなりませんので注意しておきましょう。また、公共の交通機関が利用できないような場合を除くとタクシー代も含まれません。
年末までは領収証を保管する!
医療費控除の対象になるものには限りがあり、さらに生命保険や高額療養費制度で補填される分を差し引くとなると、「医療費で10万円を超えることはなかなかないのでは?」という声をよく聞きます。ですが、1年の間に集中して虫歯の治療を受けたりすることもありますし、何らかの病気やケガでの治療をすればあっという間に10万円を超えてしまったりすることもあります。
最初にお伝えした通り、医療費控除は1年間の医療費に対して控除が受けられるもの。いつ何が起こるかわかりませんので、年末までは必ず領収証などを保管しておくようにしましょう。
セルフメディケーション税制の対象になることも
年末を迎えて医療費控除の対象にはならないことがわかったとしても、医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」の対象になることがあります。これは、「健康の保持増進及び疾病の予防への取組」として定期健康診断などをきちんと受けている個人に対して、特定一般用医薬品の購入金額が1万2,000円を超えたときに所得控除を受けることができる制度。ドラッグストアなどで購入した医薬品も含まれますので、念のためレシートを保管しておきましょう。
なお、医療費控除やセルフメディケーションの申請の際、レシートや領収証を提出する必要はありませんが、添付する明細書に詳細を記入する必要があります。申請から5年間は、提示や提出を求められることもありますので、なくさないようにしてくださいね。
今回は、医療費控除の対象になるものとならないものについてお伝えしました。基本的には、病気やケガの治療、あるいは出産を直接的に目的としたものであるかどうかで考えるとわかりやすいかと思います。チャンスを逃さないためにも、1年分の医療費にかかわる領収証やレシートなどはしっかり保管しておくようにしてくださいね。
(※本ページに記載されている情報は2020年6月18日時点のものです)