最近、成年後見制度とは別に「市民後見人」という言葉を聞くことが増えてきました。この市民後見人とはどのようなものなのでしょうか?成年後見制度における、市民後見人の内容やその役割、そして活用の仕組みについて詳しく解説します。
知っておきたい制度
成年後見制度と市民後見人とは?
2020年7月27日
成年後見人制度とは?
高齢者等が病気や加齢などにより判断力に支障が生じた際、家庭裁判所に申し立てを行い、親族や第三者後見人が「財産の管理」および「身の回りの監護」を行う制度が、成年後見制度といわれるものです。 これには家庭裁判所が後見人を選任する「法定後見制度」と、本人が将来に備え、あらかじめ後見人を選任しておく「任意後見制度」があります。
そして、法定後見制度については判断力の支障の程度により「後見」、「保佐」、「補助」の3種類に分けられます。
市民後見人が生まれた背景
近年、一人暮らしや認知症の高齢者が増加し、成年後見人の需要が増大しています。そういった中、各自治体では地域の一般市民が判断力の衰えた人を第三者後見人としてサポートする市民後見人を活用する取り組みを始めました。
市民後見人に求められる役割
市民後見人が行うサポートの主な内容は、一人暮らしの高齢者への生活支援、そして遠距離にいる親族への連絡や報告、その他介護認定の立ち合いや介護サービス利用契約、介護施設への入所契約、病院への入退院手続き、金銭管理、認知症のケア、その他介護への対応など、多岐に渡ります。
したがって、市民後見人には「本人がそれまでの生活をできるだけ継続しながら、残っている能力を生かし、自分の暮らし方を自分で決める」という理念で本人を尊重し、福祉サービスの概要から後見の事務までを理解したうえで支援するという重要な役割が求められています。
市民後見人を利用するには?
市民後見人を活用する取り組みについては、各自治体によって異なりますが一般的には以下のような仕組みで運営されています。
まず、各自治体の委託を受けた社会福祉協議会やNPO法人などが、市民後見人として活動することを希望する人に対し、必要な法的知識や技能、倫理などの研修を行います。そして研修が終了した方を、各自治体の市民後見人候補者名簿に登録します。
各自治体は適任者を家庭裁判所へ推薦し、家庭裁判所が市民後見人を選任するという流れです。後見業務においては、日常的にさまざまな法的問題の解決が必要となるため、弁護士などの専門家による相談等の支援も行われます。 また、市民後見人が適切な後見業務を遂行できるよう、社会福祉協議会などが成年後見監督人を務め、活動を支援しています。
市民後見人による活動は、弁護士などの専門職後見人の供給を補い、かつ、地域で支え合う社会を実現することにつながります。専門職後見人よりも、より地域に密着して同じ目線で接することができることから、充実した身の回りの監護が期待されています。
(※本ページに記載されている情報は2020年6月12日時点のものです)