子どもを望む夫婦にとって、不妊治療をするかしないかは人生における大事な選択の1つです。時間や身体的、精神的な負担だけでなく、さらに重くのしかかるのがお金の問題。
不妊治療の助成制度も賢く利用したいものですが、医療費控除の対象となることも知っておきましょう。
不妊治療と医療費控除の関係について簡単にご紹介します。
不妊治療にはお金がかかる!
医療費控除の対象になりますか?
2020年4月6日
不妊治療にはお金がかかる?
周囲の人の妊娠や年齢による焦りなどを理由に、不妊治療を始めてからの心のバランス取りにつらさを感じる人がいます。妊活期間が何年にもわたるケースも見られ、治療費の心配をしている人も少なくありません。
不妊にまつわるお金の話題としては、下記が挙げられます。
・治療費:不妊治療のために医療機関でかかるお金
・助成費:不妊治療費の一部を助成してもらえる公的なお金
・医療費控除:不妊治療などにかかった医療費を所得税から控除してもらえる制度
・不妊に備える保険:不妊治療への給付もある保険
今回のコラムでは、このうちの医療費控除についてご紹介していきます。
不妊治療と医療費控除の関係
保険適用外の治療も対象
不妊治療には保険適用の治療と保険適用外の治療があります。例えば排卵誘発剤などを使う薬物療法は保険適用となりますが、人工授精や体外受精は保険適用外です。
不妊の原因などにもよりますが、不妊治療には高額な医療費がかかる場合があり、治療費負担への不安から不妊治療に二の足を踏む人がいます。
不妊治療の経済的負担を和らげるために特定治療支援事業という公的(国と自治体)な助成制度もあります。しかし、夫婦合算での所得制限(国の助成の場合は730万円)がある点に注意が必要です。また助成の対象が体外受精と顕微授精に限られるなど、治療の内容により助成の対象であったりなかったりします。助成額の上限や回数制限もあります。また、妻の年齢43歳以上は対象外です。
医療費控除制度では、治療のためにかかった費用であれば保険適用外の治療費も対象となります。所得制限もありません。所得税率は所得の高い人ほど高くなる仕組みとなっており、所得の高い人ほど還付金は多くなります(ただし控除額は200万円が上限)。
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm)、厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html)
医療費控除の基本
所得には、1月1日から12月31日の間で計算された金額に所得税が課されます。この同じ期間である1月1日から12月31日の間にかかった医療費が10万円(所得が200万円未満の人の場合は所得金額の5%)を超えると医療費控除を申請できます。
・医療費控除の対象である医療費-(助成金や保険金)-10万円
上記で計算された控除分が所得金額から引かれ、所得税が少なくなる仕組みです。医療費控除の対象となる医療費には生計を一にする家族全員分を含められ、薬局で購入した風邪薬なども対象となります。
医療費控除に含まれるもの含まれないもの
漢方薬は治療に必要なもののみ
なお、漢方薬やビタミン剤については、「治療又は療養に必要な場合」にのみ医療費控除の対象となります。ビタミン剤には医薬品として販売されているものと食品として販売されているサプリメントがあることに注意しましょう。医師に処方してもらったり相談したりした上で購入し、医療費控除を申請すると安心です。
通院のために公共交通機関を利用した場合の交通費も医療費控除の対象となります。電車利用のときに券売機を使って領収書を取っておいてもいいですし、通院費として記録に残しておき確定申告の際に明細書に記載(人ごとにまとめて記載する形式)する方法でもよいでしょう。タクシー代はやむを得ない場合を除いて対象外となります。
治療のための紹介状作成料も対象
医師が必要と判断してほかの病院への紹介状を作成してくれる場合、紹介状の作成料も医療費控除の対象となります。一方、保険金給付等のための書類作成は治療に必要なことではないため医療費控除の対象外です。
入院中の食事代も入院費用の一部として医療費控除の対象となりますが、出前や外食、おやつ代など病院から給付される食事以外にかかった分は対象外となります。
スマホ申告などで気軽に確定申告
医療費控除による所得税の還付は、確定申告をしなければ行われません。申告期限が5年と長めに設定されていますが、不妊治療中に気分がふさぎこんだときなど、事務手続きを淡々とこなす機会がちょっとした気分転換になる可能性もありますよね。
気が向いたときのために領収書を取っておき、節税に賢く努めてみてください。2019年1月からはスマホで簡単に申告できるようにもなっています。
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2010/taxanswer/shotoku/2035_qa.htm、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/smart_shinkoku/index.htm)
(※本ページに記載されている情報は2020年3月26日時点のものです)