美味しいパンが大好きで、OL時代からパン教室に通っていたT美さん。最近パン屋に転職し、パン職人として働く夢を実現しました。仕事は楽しいけれど、実はこれまで大手企業に勤めており、待遇面では良かったこともあって、収入は激減。予想していた以上に収支バランスが崩れてしまい、毎月貯金を取り崩さなければいけないのが目下の悩みです。そこでT美さんの家計の状況をおうかがいしていきます。
【FP家計簿チェック】35歳パン職人。パン屋に転職するも収入が減り、貯金を取り崩す生活。家計改善の方法はありますか?
2020年3月21日
今回の相談者は、シングル女子T美さん
T美さん(35歳)のプロフィール
- ・独身
- ・一人暮らし/関西在住
- ・年収240万円/手取り月収15万円、ボーナスなし
- ・貯金700万円/定期預金、積み立て投信、iDeCo
数ヵ月前にパン屋に転職したT美さん。安定した大手企業に居続けることも悪くはなかったけれど、30代も半ばを過ぎて自分の夢と仕事を天秤にかけたときに、転職するなら今しかないと思ってパンづくりの仕事を選んだとのことです。小さなパン屋なので、まだ経験の浅いT美さんにも任せてもらえる作業も多く、やりがいも感じています。覚悟していた早朝勤務や体力仕事も毎日となれば想像以上にきついけれども、馴染みのお客様がいつも買いに来てくれると喜びの方が大きく、この仕事を選んで良かったと思えるそう。時々、自分の試作品を友人に振る舞ってパンパーティーがてら批評してもらうのも楽しみなひとときです。
仕事熱心で、何でも真面目に取り組むタイプ。
T美さんの家計簿をチェックしてわかったこと
憧れの仕事をしたいけど、収入ダウンが心配で前に踏み出せない人も多いなか、今しかないと夢を実現させたT美さん。もちろん収入ダウンも覚悟の上での決意です。
もともと真面目でお金の使い方も堅実なT美さんは、収入ダウンに合わせてお金の使い方を見直し、さまざまな費目で節約しています。しかし月々約10万円の大幅ダウンに、少しながらも家計は赤字。一人暮らしをしながらもしっかり貯めてきた貯金と退職金がありますが、少しずつでも毎月足りない分を取り崩すことに不安を感じています。会社員時代には会社で確定拠出年金に加入していたこともあり、転職時にiDeCoに加入し、今は自分で月々1万円ずつかけています。家計が赤字になっているのに、iDeCoに掛金1万円で申し込んだのは間違いだったか、他に節約するところはないかというご相談です。
そこで早速、T美さんの家計簿を転職前のものとともに見せていただきました。
家計簿を拝見すると、「食費」「交際費」「趣味」などのいくつかの費目で大幅な削減をされており、堅実に家計管理をされていることがわかります。
お聞きすると、職場でパンを食べられるため家で食べる分は少なくて済むというメリットもしっかり享受できているとのことです。また、以前はパン教室にかかっていた趣味費も本業となった今では通う必要も無くなり、その分の支出が不要になったとのことです。また早朝からの仕事のため、これまでのように終業後に友人とお茶をしたり、週末に出かけることが少なくなったそうで、家計的にはプラスに働いています。
少し気になったのが「家賃」と「通信費」です。給料が下がったからといって簡単に家賃が低いところに転居するのは簡単なことではなく、以前から暮らしている賃貸の1LDKにそのまま住んでいます。しかし今の収入に対して4割を越えており、何らかの対策を考えたいものです。
通信費も友人と出かける時間が少なくなった分、家でネットをしたり、動画を見る時間が増え、以前からの契約をそのまま利用したいとのことでした。
FPのアドバイス
食費や交際費など、転職後の職場や生活環境の変化の利点を活かしながら上手に節約をされていますが、赤字家計が続くのは避けなければいけません。家賃を抑えることができれば節約効果は高くなりますが、生活リズムや体力が必要な仕事であることを考えると、数年後にキャリアチェンジする必要もあるかもしれません。今のところはこのままシングルかも……という感じのようですが、年齢的に将来的なライフプランも変わりやすいことを考えると、当面は引越しせずに様子を見ていくのもいいでしょう。
家賃値下げ交渉を試みる
現在の住居には約7年住んでいるとのことです。2年毎に更新していっていますが、入居当初から家賃は変わっていません。
実は借地借家法という法律では家賃の値下げ交渉をすることが認められています。すでに入居している場合でも可能です。交渉はいつでも可能ですが、一般的には更新時が交渉しやすいと言われていますから、次回の更新時に交渉を試みるのもいいでしょう。ただし、交渉するにはそれなりの根拠が必要です。同じマンションの空室でより安い家賃で募集が出ている、将来的に上がる可能性はあるが今は収入が大幅に下がったなどの理由があります。ただし、必ずしも減額してもらえるというわけではありません。また、賃貸契約書に「契約期間中は家賃の増減請求ができない」旨が明記されている場合には交渉はできません。
そのままiDeCoを続けて大丈夫?
iDeCoは一旦加入すると基本的に60歳までかけ続けなければなりません。とはいえ、途中で拠出額の変更や休止の申し込みをすることは可能です。収入の大幅な減額や、停止があれば検討してもいいでしょう。
ただし、将来の公的年金を考えると、できればこのままで継続されることをおすすめします。T美さんの場合、転職先でも厚生年金に加入していますが収入が下がったため、これまでの大手企業で働き続ける場合と比べて将来の年金額の見込みが下がります。自分年金作りを実践している賢明さを尊重し、このまま続けたいものです。
iDeCoの節税効果も大切に思いましょう。毎月1万円を拠出していれば毎年12万円を所得から控除でき、その分税金が安くなります。仮に所得税率が5%だとすると6,000円の節税です。収入が下がっているからこそ、この節税効果を大切にしてください。
現在の家計の見直し
すでに様々な部分で節約をしていますが、もう少し節約してみましょう。思い切ってスマホを格安スマホにしてみるのがおすすめです。自宅で動画をよく見るとのことですが、ただの暇つぶしになっていないか確認してみてください。利用時間が少なくなればその分電気代の節約にも繋がります。
今回の家計簿チェックでT美さんへの家計簿見直し提案はこのようになりました。
もともと真面目なT美さん。将来のことも考え、赤字家計を見直すために通信費を削ることに納得していただきました。
支出を削減できた分、5,000円を投資信託の積み立てに回すことに。OL時代から積み立てしていたものの、収入減に伴い積み立てを休止していたT美さん。この機に再開してまたコツコツと資産形成に努めることになりました。
これからも美味しいパン作りとともに家計運営も頑張っていってください。
(※本ページに記載されている情報は2020年3月21日時点のものです)