昨年12月に閣議決定された2020年度の税制改正大綱では、所得に関する部分もさることながら、「NISA」や「確定拠出年金」など資産形成を支援する環境整備を目的とした項目が織り込まれています。今回はその中でも現行のNISAの制度が、この改正によってどのように変わっていくのかについて解説します。
NISAの制度が改正
その内容は?どのように変わる?
2020年3月18日
現行のNISA制度をおさらい
改正の内容を知る前に、今一度現行のNISA制度についてきちんと理解しておきましょう。
一般NISA
現行の一般NISAは2014年1月にスタートした、少額からの投資を行う方のための非課税制度です。例えば、投資信託に投資した場合、「普通分配金」と売却時の「譲渡益」が非課税になります。非課税枠は年間120万円、非課税期間は最長5年間と決められています。非課税期間の5年間が終了したときには、保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバーする)ことができるほか、NISA口座以外の課税口座(一般口座や特定口座)に移すこともできます。現在、NISAは2023年までの制度となっています。
つみたてNISA
つみたてNISAは2018年1月からスタートした、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。対象商品は、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、非課税投資枠は年間40万円、非課税期間は最長40年間となっています。つみたてNISAと一般NISAは併用することができませんが、年単位で変更することは可能です。現在、つみたてNISAは2037年までの制度となっています。
ジュニアNISA
ジュニアNISAは2016年1月からスタートした、日本に住んでいる0歳~19歳の方を対象とした、株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益が非課税となる制度です。非課税投資枠は年間80万円、非課税期間は最長5年間となっています。また、他のNISAと違い、原則として18歳までは払い出しができないという制限が設けられていることも特徴です。このジュニアNISAについても、2023年までの制度となっています。
制度改正によってどう変わる?
では、これらのNISAの制度が今回の税制改正によってどのように変わっていくのかを見ていきましょう。
出典:金融庁「令和2年度税制改正について-税制改正大綱における主要項目-」
一般NISAはこう変わる!
今回の改正で大きく変わったのは「投資の枠が2階建て」になることです。 1階部分については、年間の非課税投資枠が20万円に設定され、つみたてNISAと同じ長期・積立・分散投資に適した商品のみ選択可能となります。 そして2階部分については、年間の非課税枠は102万円となり、一部のレバレッジ投信などのハイリスク商品は対象外となります。非課税期間はどちらも最長5年間となり、期間が2028年まで延長されます。
つみたてNISAはこう変わる!
現行のつみたてNISAは期限が2037年までとなっているため、2019年以降に始めると非課税期間を20年間確保できなくなってしまいます。そのため、今回の改正で5年間延長され、2042年まで制度が適用されることになりました。
ジュニアNISAの制度終了
現行のジュニアNISAは2023年までの期限となっていますが、一般NISAやつみたてNISAに比べ、利用実績が乏しいことから、ジュニアNISAについては期間の延長は行わず、2023年で終了することとなりました。
改正のポイント
今回の改正の大きなポイントは、「一般NISAに制限が加わる」ことでしょう。 より安定した投資ができるように、NISA口座で購入できる商品を制限したわけですが、人によってはそれ以外の商品で運用を続けたいと思われる方もいるでしょう。そういう方にとっては、制度改正によってNISAの魅力が薄れてしまうかもしれません。
制度改正は2024年以降からなので、現行のNISAを利用してハイリターンの投資で少しでも節税したいという人は、早いうちに銘柄を見つけて、投資しておくことをおすすめします。
(※本ページに記載されている情報は2020年3月18日時点のものです)