不妊で悩んでいる女性は、実はとても多いのではないでしょうか。不妊治療と聞くと、高額なイメージがありますが、段階によって費用は異なり、最初のステップであればそれほど費用はかかりません。また、保険適用外の高額な治療に対しては、国や自治体の助成金制度を利用できます。知っておいて損はない“不妊治療とお金”について解説します。
不妊治療はどのくらいかかる?
ステップごとの費用と助成金について知っておこう!
2020年2月21日
ステップごとの費用の目安
不妊治療と一言で言っても、タイミング法から体外受精まで、ステップによって費用は大きく変わります。不妊治療は保険が利かないと思われていますが、タイミング法や排卵誘発は保険が適用されます。ステップごとの費用の目安を見て行きましょう。
タイミング法
不妊治療の最初のステップがタイミング法です。タイミング法は排卵日の前後に性行為を行うことで妊娠率を上げる方法です。基礎体温を付けていれば、排卵日は予測できますが、クリニックの超音波検査によって、より正確に予測ができます。妊娠率はあまり高くはないので、時間に余裕のある若い患者や、検査で異常のなかった患者が行う場合が多いようです。
タイミング法は保険が適用されますので、費用は数千円ほどです。
人工授精
タイミング法がうまくいかなかった場合に次のステップとして人工授精があります。
人工授精は、子宮や卵管に元気な精子を選んで人工的に注入する方法です。人工と名前が付くので誤解されがちですが、患者さんの卵管で行われる自力での受精なので、自然妊娠とまったく同じです。1周期の妊娠率はタイミング法よりは上がりますが10%に満たないため、回数を重ねて妊娠率を上げます。5周期行って妊娠しなかった場合には次のステップに進む場合が多いようです。
人工授精は保険適用外となり、費用は1回あたり1万円~2万円ほどです。
体外受精
タイミング法や人工授精で妊娠できなかった場合の最後のステップが体外受精です。卵巣から卵子を取り出し、培養液の入ったシャーレーの中で精子と受精させ、受精卵ができたら子宮の中に戻して妊娠させる方法です。また、体外受精でも難しい場合に、顕微授精があります。これは、1個の精子を細い針に吸引して、卵子の細胞室内に注入する方法です。精子の数が少なかったり、運動率が低い場合に検討されます。
年齢によって違いはありますが、妊娠率は1回あたり30~40%に上がります。
体外受精は保険適用外となり、費用は1回あたり20万円~50万円ほどかかります。
体外受精には助成金がある
体外受精へとステップアップすると一気に治療費が跳ね上がります。しかし、国や自治体の助成金制度を利用することで、費用の負担を軽減することができます。
特定治療支援事業
体外受精及び顕微授精は「特定不妊治療」とされ、対象に当てはまれば、国から助成を受けられます。
<対象者>
(1) 特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻をしている夫婦
(2) 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
(3) 夫婦合算の所得が730万円未満
<支援の内容>
・1回の治療につき15万円まで助成(初回の治療に限り30万円まで助成)
※採卵を伴わない凍結胚移植等については7.5万円まで助成
・通算助成回数は、初めて助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満であるときは6回、40歳以上であるときは3回までとなる。
気を付けたいのが730万円という所得制限があることと、妻の年齢によって、対象とならなかったり、通算の助成回数に違いがあることです。そのため、利用できない人も出てきます。
しかし、自治体によっては、所得制限を緩和して対象者を拡大したり、助成回数の制限を撤廃しているところ、あるいは、独自の補助金制度を設けて、助成金の上乗せを行っているところなどもあります。まずはお住まいの自治体に特定不妊治療の助成について問い合わせてみましょう。
ちなみに東京都では2019年4月1日以降に開始した1回の治療について、所得制限額を905万円未満に緩和しています。
不妊治療は医療費控除の対象になる
不妊治療での保険適応外の治療費も医療費控除の対象となることをご存知でしょうか。
医療費控除は1年間に支払った医療費から保険金や補助金などの補填される金額引いて、10万円以上になれば、その超えた金額が医療費控除の対象となります。(※)
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
この1年間に支払った医療費は世帯合計の医療費であり、不妊治療の費用もそこに含みます。特定不妊治療の助成金を受け取った場合は、その金額を引いたものとなります。
対象となる不妊治療費
医療費控除の対象となる医療費の範囲は広いので覚えておきましょう。
タイミング法などの保険適用のもの、体外受精などの保険適用外のもの、どちらも医療費控除の対象となります。
他に「こんなものも?」というものを列挙します。
・不妊治療のために処方された薬代
・不妊治療を行う医療施設までの交通費(公共交通機関のみ)
・卵子の凍結保存料
・不妊治療の一環として行われる、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費
・不妊治療のための漢方薬の購入費用(医薬品の定義に当てはまるもの)
不妊治療で疲弊しないために
最後に、FPとして、また不妊治療経験者のひとりとしてアドバイスしたいと思います。
不妊治療はとにかくお金がかかります。利用できる助成金はもれなく申請しましょう。また、医療費控除も忘れないようにしましょう。不妊治療は金額が大きくなるため、思った以上に還付金が受け取れるかもしれません。
不妊治療はお金の問題だけではありません。体力、精神ともに疲弊します。治療のステップが上がるほど、身体に負担がかかります。妊娠に至らなかった時の落ち込みは言うまでもありません。妊娠しても流産してしまった場合は、身体はもちろんのこと、心のケアも必要となります。
さらに、仕事との両立が大変難しいのが不妊治療です。排卵誘発剤の注射のために週に何度も通ったり、採卵、移植のタイミングによって、急に休みを取らざるを得なくなります。治療に理解のある職場でないと続けていくのは難しいかもしれません。しかし、ここは可能な限り、仕事は辞めずに不妊治療を続けていくことを考えてほしいと思います。なぜなら、不妊治療に専念してしまうと、余計に苦しくなってしまうからです。
ゴールを設定することも大切です。年齢でも、回数でもいいので、夫婦で話し合って納得する帰結を導き出してほしいと思います。
(※本ページに記載されている情報は2020年2月21日時点のものです)