パソコンやスマホでお金の取引をすることが一般的になっている今、ネット銀行の口座やネット証券口座、電子マネー、仮想通貨などのデータとして記録されているデジタル資産が相続の際に問題となっています。存在に気づかず放置されて、気付いてもIDやパスワードがわからず、アクセスできないなど、故人にしか知り得ない情報を遺族が知ることは大変です。そこで、デジタル資産をスムーズに相続するための対策をお伝えします。
「デジタル資産」の相続が大問題!
存在を知らない、アクセスできない、対処法は?
2019年12月10日
デジタル資産とは
ネット銀行の口座やネット証券口座にある資産や電子マネー、仮想通貨など、データとして記録されている資産を指しますが、お金に直接関係するものだけでなく、写真や動画、データ化された文章、デジタル絵画なども価値を見出せばデジタル資産と言えるでしょう。
こうした資産は、相続が発生した時に、遺族が把握していないために放置されてしまい、また、把握していたとしても、パスワードがわからないために対処できないなど、大きな問題となっています。
今後さらに、デジタル資産と呼べるものは増えていくでしょう。相続の際に、困ったことにならないように、今から対処法を考えておきましょう。
今から準備しよう
デジタル資産のリストを作成する
どんなデジタル資産を持っているか、まずはリストにしてみましょう。スマホ決済サービスや、ポイントカード(※)なども確認しておきましょう。
※マイレージポイント(マイル)は相続可能ですが、Tポイントやnanacoなどの買い物で得られるポイントのほとんどは相続できません。
あまりに数が多い場合は、今のうちから口座をまとめて、サービスを集約するなどして数を減らしておくと、相続のみならず管理の手間が減って、自分にとっても家族にとっても有益です。
リストには、IDやパスワードなども記載し、アクセスできるようにしておくことが肝要ですが、パスワードを一緒に記載することに抵抗があるなら、家族にしか知り得ない場所にパスワードだけを別に保管するという方法もあります。
エンディングノートの活用
最近では、このようなデジタル遺品リストを書き込めるエンディングノートなども市販されています。エンディングノートは葬儀や埋葬の希望、家族へのメッセージなどを書き記せるので、終活には欠かせないものとなってきました。
他にもエクセルで資産をリスト化したファイルを作成し、パスワードを設定して、家族にそのファイルの場所とパスワードを知らせる方法などもあります。
しかし、パソコンやスマホなどはセキュリティの高さゆえに最初のアクセスで難儀することも考えられるため、ノートや手紙などのアナログな媒体に記録した方がよいかもしれません。
家に金庫がある場合は、その中に保管しておくとさらに安全ですね。
パスワードがわからない時は
さて、このような準備がなされず、パスワードが不明でアクセスできない場合はどうしたらよいでしょうか。実は、ネットの銀行口座や証券口座は、IDやパスワードがわからなくても、その金融機関に連絡をし、口座の持ち主との関係が証明できれば対応してくれます。しかしその前段階のパソコンやスマホにアクセスできない場合などは、専門の業者に依頼し、パスワード解除をしてもらう必要があります。業者によってさまざまですが、それ相応の料金がかかります。
こうした業者は、パスワード解除、ロック解除以外にも、データを復旧させたり、消去したりする業務を行っており、特に、デジタル遺品の整理、消去などの依頼は年々増えているようです。
デジタル遺品整理サービス
最近では、デジタル遺品の整理サービスとして、生前整理アプリが登場しています。保有しているデータを内容ごとに分類して、残したいデータと削除したいデータに分けておき、効力が発生した時に自動消去されるというものです。家族であっても見られたくないものはありますから、こうしたツールは便利です。
今後、こうしたデジタル遺品の整理に関するサービスの需要はますます高まっていくでしょう。
ネット取引についての注意点
高齢者のネット利用は年々増えています。自分の親がパソコンで株の取引をしてをしていることは知っていても、どこの証券会社で何の取引きをしているのか、家族と言えどもなかなか知り得ないのではないでしょうか。たとえば、故人が投資信託を購入していた場合、存在を知らずに放置していると、信託報酬などの手数料は取られ続けてしまいます。
特に怖いのがFX(外国為替証拠金)などの、元手にレバレッジをかけて何倍もの取引が可能な商品に投資していた場合、手じまいせずに亡くなったとしたら、少しの期間でも大きな損失となる可能性があります。
エンディングノートの準備を考える年齢になったら、リスクの高い投資は控えた方がよいでしょう。また不要な取引は極力減らしていくようにしたいものです。
相続はすべての人に関係する事柄です。見えている相続財産でさえ手続きは複雑なのですから、見えていないデジタル資産は困難を極めるでしょう。こうした事態を避けるためにも、家族間で情報を共有しておくことはとても大切です。
お正月は家族が集まるよい機会です。デジタル資産について話し合っておくと安心ですね。
(※本ページに記載されている情報は2019年12月10日時点のものです)