がん保険や医療保険の特約でよく聞く「先進医療特約」。何となくこの特約付けておいた方がいい感じがするけれど、いったい「先進医療」ってどういうもので、本当にこの先進医療特約って必要なのかどうか、お伝えします。
実はよくわかってない「先進医療」って何?
2019年12月11日
1.先進医療とは
先進医療とはどんなものか、その概要とデータを見てみましょう。
概要
先進医療とは、特定の大学病院などで研究・開発された新しい治療・手術の方法のうち、ある程度実績を積んで厚生労働省から「先進医療」として認められた段階の治療・手術方法のことです。
この段階からさらに公的医療保険の対象にするかどうかを評価し、評価の結果によって、公的医療保険の対象になるものもあるし、対象から外れるものもあります。
先進医療はがんの治療のイメージが強いかもしれませんが、がんの治療に限っているわけではなく、例えば「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」という白内障の手術など、さまざまな病気を対象としています。2019年6月1日現在、先進医療は89種類となっています。詳しい先進医療の対象となる医療機関や治療法はネットで検索して調べることができます。
がん保険や医療保険の特約として付保している先進医療特約の保障範囲が、「特定の大学病院などでの治療・手術でなければいけない」のは、もともと先進医療がそのような定義であるためで、先進医療が高額であるのは、まだ公的医療保険の対象になっていないからです。
データ
ここ数年の推移をみると1年間に何らかの治療を受けている総患者数は約200万人、そのうち先進医療を受けた人は約28,000人です。全体の1.4%ということになります。
先進医療の費用は高額なものが多く、300万円を超えるものもありますが、10万円程度で済むものもあります。
先進医療を受けた場合の医療費は、先進医療部分と公的医療保険が適用できる部分に分け、先進医療部分は全額自己負担、公的医療保険が適用できる部分は3割負担になります。
実際にどれくらいの費用負担になるのか、昨年の実績で計算してみましょう。全額自己負担である先進医療技術料の一人あたりの負担額は平均で84万円。公的医療保険が適用される部分は、高額療養費制度を使い、月収28~53万円の会社員であれば、約88,000円なので、医療費総額は約93万円となります。(公益財団法人生命保険文化センターの算出データを参照)
2.先進医療特約は必要か
これらのことを踏まえて、先進医療特約が必要かどうか考えてみましょう。
通常の治療も可
例えばがんの治療で重粒子線治療というものがあります。これは放射線治療の一種で、標準治療の放射線よりもがんの病巣を集中的に叩くことができるので副作用が少ないと言われている治療法ですが、標準の放射線治療で治療できないということではありませんし、放射線治療を受ける人がすべて代わりに重粒子線治療を受けられるわけでもありません。
また、この治療法に限らず、先進医療は公的医療保険が適用できるかどうか評価の段階にある新しい方法ということで、十分な効果が確認できているわけではありません。先進医療を受ければ必ず治るとか、生存率が上がるということではありません。一方、公的医療保険が適用される標準治療は、安全性と有効性が優れていることが確認されている最良の治療法ということになっています。
治療費や効果がを考えれば、標準治療を受けるという選択も十分にありです。
不安なら特約をつける
上述のように、特定の病院や特定の治療でなければ先進医療ではないので、自分が先進医療を受ける可能性は低いですし、先進医療で治療できるとなっても、費用面や実績などを考慮して標準治療法を選択することも可能です。
ですから、必ずしも先進医療特約は必要ではありませんし、ましてわざわざ先進医療のために新しく医療保険やがん保険に加入する必要もありません。
しかし、もし自分が病気になって先進医療が受けられるとなったら先進医療を選択したいとか、どうしてもないと不安だという場合は医療保険やがん保険に特約としてつけてもいいでしょう。月々100円程度の保険料ですので、それで安心になるのであればよいと思います。
ただし、医療保険につける場合と、がん保険につける場合で保障範囲が変わってくることと、先進医療として認められている治療法が入れ替わるので、内容をよく確認してから付保しましょう。
以上のように、先進医療は必ずしも心配することはありませんが、もし病気になった時、先進医療の対象となった時に備えて、自分はどういう選択をするのか、保険はどうするか、貯金はどれくらいしておくかなど、あらためて考えておくことをおすすめします。