2017年に導入されたセルフメディケーション税制。そしてそれに合わせて医療費控除の手続きが一部変更になったことは、じつはあまり知られていないのが実情です。従来の医療費控除については、どのようなものが対象となって、どのようなものが対象外なのか、ある程度理解されている方も多いと思いますので、今回はセルフメディケーション税制と、医療費控除の手続きの変更点について説明していきます。
実はあまり知られていない!新しくなった医療費控除の手続きとセルフメディケーション税制
2019年12月6日
セルフメディケーション税制ってどんなもの?
この制度は、医療費控除の特例として2017年に制定されたものです。制度の目的は「病気の症状が軽い人の通院をできるだけ減らし、社会保障費を抑える」 ことです。国の社会保障費(医療や介護、年金など)が増え続ける現状に対し、何とかしなければならないという背景が存在するのです。 セルフメディケーション税制の特徴は以下の3つです。
1.かかった費用が少額であっても所得控除できる。
2.2017年~2021年分の期限付きの制度である。
3.「通常の医療費控除」とは併用できない。
セルフメディケーション税制を受けるためのポイント
セルフメディケーション税制とは「1/1~12/31に健康維持促進や疾病予防に取り組む人が、「本人」もしくは「本人と生計を一にする配偶者その他の親族のために、一定のスイッチOTC医薬品をドラッグストアなどで購入した場合であって、その購入費用が12,000 円を超えた場合に受けることが出来る所得控除」です。これには上限があり、88,000円となっています。 そしてこの特例を受けるためのポイントをご紹介します。
1.健康維持促進や疾病予防に取り組む人の定義については、確定申告を行う人が、「定期健診やがん検診、人間ドックや予防接種などのいずれかを受けていることが必要であり、さらに結果通知書や領収書などの証明が必要 」となっています。
2.一定のスイッチOTC医薬品とは「厚労省が指定した、医療用から一般用に切り替えられたもの 」となっており、商品にも専用のマークがついています。また、レシートにも対象商品である旨の印がつけられています。
通常の医療費控除とセルフメディケーション税制、どっちが有利?
では、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制。どちらを使うのが有利なのでしょうか?2つの例で確認してみましょう。
1.年間にかかった医療費は12万円。そのうち、スイッチOTC医薬品の購入費用が2万円の場合。
(通常の医療費控除) 12万円-10万円=2万円
(セルフメディケーション税制) 2万円-1.2万円=8,000円
・・・通常の医療費控除の方が有利。
2.年間にかかった医療費は12万円。そのうち、スイッチOTC医薬品の購入費用が4万円の場合。
(通常の医療費控除) 12万円-10万円=2万円
(セルフメディケーション税制) 4万円-1.2万円=2.8万円
・・・セルフメディケーション税制の方が有利。
このようにケースバイケースでどちらを選択するのが有利か、きちんと自分で計算する必要があります。ただし、セルフメディケーション税制の所得控除上限額は上に記載した通り88,000円となっていますので、もし1年間にかかった医療費が18万8千円を超えているのであれば、計算するまでもなく通常の医療費控除を利用する方が有利となります。
医療費控除の申告手続き。何が変わった?
今まで、医療費控除の申告の際には領収書を添付する必要がありました。しかし1年間にかかる全ての領収書の管理が面倒であることや、集計作業の煩雑さを解消するため、2017年より添付書類の内容が変更されることになりました。
ポイントは領収書の取扱い
現在では医療費控除の申告の際、添付する書類としては「医療費や医薬品購入費の『明細書』を添付すれば、領収書の添付は不要となりました(但し、5年間の保管が必要)。また、例外として、明細書の代わりに医療保険者からの通知書「医療費のお知らせ」を添付した場合は、領収書の保管は不要となります。
「医療費のお知らせ」を添付する場合の注意点
お手元に届く「医療費のお知らせ」についてはタイムラグがあり、年末までに届くものは10月分までの医療費しか載っていません。従って、11月および12月の医療費については自分で明細を作成する必要があることに注意してください。
また、円単位で記載されており、実際の支払額とは多少のずれがあることにも注意しておく必要があります。そのほか、医療費助成や高額療養費の払い戻しについても反映されないことから、そのようなケースがある場合は、自分で補完資料を作成しなければなりません。
「医療費のお知らせ」の添付だけであればとても便利なのですが、まだまだ完璧なものではないということを理解しておく必要があります。
(※本ページに記載されている情報は2019年12月6日時点のものです)