秋になると、次々と保険会社から保険料控除証明書が送られてくると思います。この保険料控除証明書は年末調整や確定申告で使用し、所得から支払った保険料を差し引くことで、税金の負担を軽くできます。また、これによって、支払った保険料の金額と契約の内容を確認し、保険が今の生活と合っているかをチェックする機会にもなります。届いた証明書は大切に保管し、忘れずに申告をしましょう!
税金が安くなる保険料控除
もれなく申告してますか?
2019年10月26日
保険料控除とは
所得税の計算では、収入から必要経費と所得控除を引いた金額である課税所得を出し、その課税所得に税率をかけて所得税の金額を求めます。
所得控除には、人的控除と物的控除があり、人的控除は配偶者控除、扶養控除、基礎控除などがあります。一方、物的控除は医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などがあります。
ここで取り上げる保険料控除とは、生命保険料控除と地震保険料控除です。これらは、毎年秋頃に保険料控除証明書が送られてくるので、会社員の場合は年末調整、自営業の方は確定申告で、保険料控除の申告をします。これによって1年間に支払った保険料に応じて控除額が決まり、結果、課税所得が減ることで税金が少なくなります。
生命保険料控除の3つの区分
生命保険料控除は次の3つに分けられます。
1.一般生命保険料控除
2.個人年金保険料控除
3.介護医療保険料控除
一般生命保険料控除
生存と死亡に関して、保険金あるいは給付金が支払われる保険が対象です。終身保険、定期保険、養老保険、学資保険などがあります。
また、保険金の受取人が保険料負担者本人、配偶者、親族である契約が対象となります。
個人年金保険料控除
以下に当てはまっている個人年金保険(定期年金・終身年金)が対象となります。
・年金の受取人が契約者またはその配偶者であること
・被保険者が年金受取人であること
・掛金の払込期間が10年以上
・年金受取開始時の年齢が60歳以上で、かつ受取期間が10年以上
・「個人年金保険料税制適格特約」を付加した契約であること
介護医療保険料控除
2012年1月1日以降に締結した介護保険、医療保険、がん保険、就業不能保険などが対象となります。そのため、介護保険料控除は新制度のみとなります。
これらの保険の入っている場合、年間の支払い保険料に応じて一定額が控除されます。
旧制度と新制度で控除額が変わる
2012年の法改正により、旧制度と新制度に分けられ、契約日によって対象となる契約や控除額が変わっています。
2011年12月31日以前に締結した保険契約は旧制度が適用され、2012年1月1日以降に締結した保険契約は新制度が適用されます。
旧制度の場合、所得税の控除額は最高5万円、住民税は最高3万5,000円となり、2つの控除を合わせると、所得税の限度額は10万円、住民税の限度額は7万円となります。
新制度の場合は、所得税の控除額は最高4万円、住民税は最高2万8,000円となり、3つの控除を合わせると、所得税の限度額は12万円、住民税の限度額は変わらず7万円となっています。
たとえば、新制度の契約で一般生命保険料10万円、個人年金保険料12万円、介護医療保険料6万円を払い込んでいた場合、所得税の控除額は40,000円+40,000円+35,000円で、合計11万5,000円となります。
住民税の場合は、28,000円+28,000円+28,000円で合計84,000円と計算上はなりますが、上限が7万円となっているため、控除額は7万円になります。
地震保険料控除も忘れずに
個人が支払った地震保険の保険料は、地震保険料控除の対象となります。ただし、地震保険は単体では加入できず、住宅火災保険や住宅総合保険とセットで加入します。この場合、地震保険料控除の対象となるのは、地震保険料部分のみとなり、火災保険料部分は対象となりません。
また、現在、損害保険料控除は廃止されていますが、2006年12月31日までに契約した10年以上の長期契約の損害保険は、経過措置として損害保険料控除の対象となります。この場合、損害保険料控除の上限は15,000円となりますが、地震保険料控除もある場合は合算して5万円が上限となります。
保険料控除の申告の方法
生命保険料控除および地震保険料控除を申告するには、保険会社から送られてくる保険料控除証明書が必要となります。
年末調整で控除を受ける場合
会社員など、勤務先が年末調整をしてくれる場合は、給与所得者の保険料控除申告書に保険料控除証明書の内容を記載し、証明書を添付して提出をすれば申告は完了です。年末調整の結果、還付が受けられれば、所得税の場合は給料と一緒に還付金が振り込まれます。住民税の場合は、翌年の住民税が減額されます。
確定申告で控除を受ける場合
自営業者など、確定申告で納税をする場合は、確定申告書類とともに、保険料控除証明書の原本を提出する必要があります。確定申告は基本的に毎年2月16日〜3月15日まで行われており、税務署に直接持ち込む方法、郵送で提出する方法、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用する方法があります。e-Taxは申告書をデータ送信することで、自宅から申告ができ、保険料控除証明書などの書類の提出を省略することができます。
1年に1回届く保険料控除証明書は、所得税、住民税が軽減される保険料控除のために使われますが、保険契約の内容を確認するいい機会にもなります。年間どのくらい保険料を払っているのか、今の生活に合っている契約であるか、無駄があれば思い切って見直してみるのもよいでしょう。
(※本ページに記載されている情報は2019年10月26日時点のものです)