R子さんは、毎年1度は女子友と2人で海外旅行に行っています。現地の人と交流するのも楽しく、旅行する度に「いつかは海外で暮らしてみたい」と憧れを持つようになりました。年齢的に、2人でこうして来られるのもあと何回だろうと考えるうち、憧れを通り越して留学したいと考えるようになったそう。しかし、お金のことを考えると、いまの貯金では心許なく不安でいっぱい。そこで、R子さんの家計簿をチェックして貯金UPの方法を考えます。
【FP家計簿チェック】28歳、営業女子。海外旅行が好きですが、留学にも憧れます。留学資金を貯める方法はありますか?
2019年10月12日
今回の相談者は、シングル女子R子さん
R子さん(28歳)のプロフィール
・独身
・一人暮らし/大阪在住
・年収450万円/手取り月収25万円、ボーナス60万円
・貯金350万円/定期預金、積み立て投信
大手企業で営業職に就いている会社員のR子さん。全国転勤ありの職種でこれまでの配属先は千葉、名古屋、大阪と3都市。元々旅行好きなR子さん配属先でもさまざまな地域を訪ねられると転勤にも前向きな様子です。
プライベートでは仲良しの同僚と毎年休暇を合わせて取って、約10日間の海外旅行に出かけています。年1回の旅行のためにと毎月定期的に積み立てもしているしっかり者のR子さん。昨年ぐらいから、こうやって2人で来れるのもいつまでかなあ……とお互いになんとなく口にするようになったのだとか。そう思うと、仕事は楽しく、続けたいけれども海外で少しの期間暮らしてみたいとも思うようになってきたそうです。
R子さんの家計簿をチェックしてわかったこと
海外旅行用の積み立て以外に、毎月定額を貯金しているR子さん。転勤族ということもあり、会社からの家賃補助が多めにもらえるとのことで、家賃の自己負担は月3万円というのが家計負担を楽にしているそうです。ただ、ノルマがない営業職で給料は定額でいただけているけれど、ボーナスに営業成績が反映するのでボーナスでの貯金はあまり当てにしていないとのしっかりした考えです。
貯金の目的はこれまでとくに決めてはおらず、将来の結婚資金や何かで必要になったときのための貯金ということでした。また、同僚との海外旅行の行き先や過ごし方によっては、別にしている旅行用貯金で不足することもあり、普通の貯金から少し出すこともあるのだとか。
とくに節約も贅沢もしておらず、現状では家計的にも問題はないとのことですが、留学が頭にちらつき始めてからは、今ある貯金で大丈夫なのか、今の貯金がなくなったらその後はどうしたら良いのだろうか……などと気になり始めたというご相談です。
そこで早速、R子さんの家計簿を拝見しました。
家計簿を拝見すると、一般的な一人暮らし女性に比べて貯金の割合が高く立派です。やはり「家賃」が少なめであることと、営業手当が支給されて手取り月収も悪くないのが好走しているようです。
少し気になったのが「食費」「交際費」「被服・美容費」が高めであることです。営業職で身だしなみや付き合いにお金がかかるのは仕方ない部分もありますが、毎月これだけの金額が必要かといえば、そうではない気もします。
また、一日中車で得意先回りをするため、朝食、昼食はいつもコンビニでパンやお弁当を買って食べているとのこと。平日は車で移動することが多いため、休日は近場の温泉や大浴場でのんびりくつろぐのが習慣で、やはりランチは外で食べることが多いとのことです。
現状の貯金で留学はできる?
今回のR子さんのご相談は、もしも近いうちに留学するとなったときに今の貯金の状態で行っても大丈夫かということです。留学すると、渡航費や授業料、留学先での生活費等々、まとまったお金が必要です。一気に貯金を使ってしまうのは帰国後の生活が心配ということで、どの程度貯めてから行けばいいのか、またどのくらい貯金を使わないでおいておくのがいいのかということでした。
ただ、ひとくちに「留学」といっても、留学スタイル、滞在国、滞在期間、滞在地での居住スタイルなどによって必要金額は大きく変わるものです。まずは外国に住むことで何をしたいのか、何を身につけたいのか、どのくらい滞在したいのか、行き先はどこが希望かなどについてあらためて考えていただきました。
どこに、どうして行きたいのかを整理してみると次のような結果になりました。
・友人と旅行で行ったマルタが忘れられず、もう一度滞在したい
・外国人とのコミュニケーションを取りたい
・現地の生活をしてみたい
・語学を修得して将来のキャリア(現時点では不明)に活かしたい
・英語ができれば何かと役に立つかも
マルタはヨーロッパ、地中海に浮かぶ英語圏の小国です。リゾート地として知られていて、住民も気さくな人が多いと聞きます。一度訪れた人を惹きつけて離さないと、筆者の知人からも聞いたことがあります。そこでR子さんはマルタへの語学留学を検討することに。
滞在スタイルによっても費用は変わりますが、目安を調べてみると3カ月間の語学留学で60万円~155万円。6カ月間で120万円~305万円、1年で230万円~615万円とのことでした(※)。
R子さんの貯金は現在350万円ですから、滞在費を抑えれば6カ月~1年でも行けないことはありません。しかしながら、R子さん自身が言うように、一気に貯金を使ってしまうと帰国後の生活が心配です。帰国後はより一層のキャリアアップを目指しつつ、すぐに働くつもりとのことですが、すぐに就職できないリスクなどを見込んで最低でも生活費の6カ月分の150万円は置いておきたいものです。
そこで、200万円を留学費用と見積もることにして、留学期間や学校選びにトライすることになりました。
FPのアドバイス
留学費用として含まれるものは斡旋業者によっても異なります。目安として今回チェックした業者では学校にかかる費用以外に滞在手配料や滞在費用などが含まれるようですが、航空運賃やビザ申請にかかる費用、おこづかいなどは別途必要です。それを含めると200万円の予算でもギリギリになる可能性もありますから、できればあと50万円~100万円程度は貯金を増やしてから行くほうが安心です。
現在月々4万円ずつ貯金をしていますから、1年後には48万円増える計算になりますが、R子さんの場合、現在家賃補助のおかげで住居費を低く抑えられていることを忘れてはいけません。帰国後にも同程度の住居費で暮らせるとは限りませんから、現在月々4万円の貯金分は先に述べた6カ月分の帰国後の生活費に加えて手を付けずに置いておきたいお金です。
そこで、現在の旅行用貯金にプラス2万円を目指し、留学用貯金を開始することにします。
家計見直し
冒頭で見たように、R子さんの場合は「食費」「交際費」「被服費」などが高めですから、少しずつ削っていきます。たとえばコンビニでパンやお弁当と一緒に買う飲み物はマイボトルを持って行くようにして節約。休日にはできるだけ家で自炊を心がけます。週末の温泉やスパも回数を減らし、自宅でのんびりDVD鑑賞をして英語を聞く機会を増やします。
貯め方も効率的に貯めれるよう工夫をします。たとえば航空券代は旅行積立で貯めていけば、銀行預金よりも金利面でおトクです。また現地で使うお金のために外貨積立を始めるのもいいでしょう。毎月の積み立て時には為替によって外貨の購入量が変動しますが、現地で引き出す際には為替の動きを気にする必要はありません。銀行によっては現地での引出し手数料も不要とする外貨預金もあり、外貨で使うことを考えるとおトクになる可能性もあります。
今回の家計簿チェックでR子さんへの家計簿見直し提案はこのようになりました。
留学は語学やグローバル感覚を身につけることができ、将来のキャリアアップにつながったり、収入アップの可能性を高めてくれたりします。R子さんにもぜひ実現してもらいたいものです。
しかし、帰国後の就業の不安が残ることは否めません。その対策としてサバティカル休暇の利用を検討してみるのもおすすめです。サバティカル休暇はヨーロッパを中心に普及している制度で、長期間勤務者に対して付与される、使途に制限のない長期休暇です。
休暇中は無給ですが、休暇取得後も取得前と同じもしくはそれに類する仕事に復帰でき、給与も休暇取得前より下げてはならないこととされています。最近では「働き方改革」の一貫で、日本でも導入する企業が増え始めてきているようです。R子さんの勤務先が導入しているか、会社に相談してみるのもいいでしょう。
R子さんがサバティカル休暇を利用できるなら、退職する必要もなく、帰国後にスキルアップをした状態で職場復帰できるのではないでしょうか。
(※本ページに記載されている情報は2019年10月12日時点のものです)