今回の税制改正は、2019年10月の消費税率引き上げに伴い、駆け込み需要と増税後の消費の冷え込みが予想されるため、これらの影響を少なくするための対策が中心となっています。そこで、我々の生活に大きくかかわってくるものをピックアップして、何がどのように変わるのか、対策も含めてお伝えします。
知っておきたい!2019年「税制改正」
私たちの生活にどう影響する?
2019年8月1日
消費税率引き上げに伴う対策
消費税率引き上げによって、大きな影響が出るものと言えば、金額の大きい住宅と車ではないでしょうか。今回の税制改正ではまさにこの二つについての対策が講じられています。
まずは住宅から見て行きましょう。
住宅ローン控除の拡充
消費税10%が適用される住宅購入において、住宅ローン控除の期間が3年延長され、13年となります。
10年目までは、現行どおり、住宅ローンの年末残高(4,000万円※を限度)×1%が所得税、住民税から控除され、11年目から13年目は、建物購入価格(4,000万円※を限度)×2%÷3年と、住宅ローン残高の1%のいずれか少ない金額が控除されます。
【10年目まで】
住宅ローンの年末残高(4,000万円※を限度)×1%
【11年目から13年目】
①住宅ローンの年末残高(4,000万円※を限度)×1%
②建物購入価格(4,000万円※を限度)×2%÷3年
①と②のいずれか小さい額を控除
※長期優良住宅や低炭素住宅の場合:住宅ローン残高の上限5,000万円、建物購入価格の上限5,000万円
2019年10月1日から2020年12月31日までに入居をすることが条件となっています。
消費税率引き上げ後の住宅購入については、他に「すまい給付金」の増額や「次世代住宅ポイント制度」があるため、一定の条件を満たしている場合は、増税後に住宅を購入した方にメリットがあります。
「すまい給付金」については、 「消費税10%への増税にともなう「すまい給付金の拡充」!いくらもらえる?」 を参考にしてみてくださいね。
自動車税の見直し
住宅の次に高い買い物と言えば車ですね。
自動車に関連する税金には2種類あり、自動車を取得した時にかかる税金と、所有しているとかかる税金です。
※自動車重量税は新規登録時と車検時に払う税金です。
2019年10月1日から、自動車取得税が廃止され、新たに自動車税・軽自動車税の一部として環境性能割が導入されます。これは燃費基準の達成度に応じて税率が変わるもので、2020年9月30日までの1年間に取得した場合は基本の税率からさらに1%軽減されます。
また、自動車の排気量等に応じて毎年かかる自動車税・軽自動車税は、自動車税(種別割)・軽自動車税(種別割)となり、自動車税(種別割)は、10月1日以降に新車登録した分から、最大で4,500円減税(恒久減税)されます。
自動車重量税の軽減措置としてのエコカー減税は2021年4月30日まで延長となりました。2019年5月1日以降、新規で登録したものについては軽減割合の見直しがあります。
自動車税のポイントとしては、エコカーなどの環境性能に優れた車は、ほとんどの税金で優遇を受けられます。一方で、長く乗っている車や燃費の悪い車は増税となってしまいます。
また、軽自動車については、減税の措置がないため、消費税増税前に購入した方がおトクと言えます。
子育て世帯にかかわる改正
次に子育て世帯がかかわってくる税制改正を見てみましょう。
教育資金の一括贈与および結婚・子育て資金の一括贈与の非課税
今回「教育資金の一括贈与および結婚・子育て資金の一括贈与の非課税」について、見直しが行われました。
親や祖父母から子・孫に対する贈与税は、教育資金を一括贈与する場合は1,500万円まで非課税、結婚・子育て資金の一括贈与の場合は1,000万円まで非課税となります。
これらの制度が格差の固定化につながるのではないかという批判があったことから、教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与ともに、受贈者の年間所得が1,000万円を超える場合は対象外となりました。また、教育資金の一括贈与については、23歳以上の受贈者は、教育資金の範囲が学校等の入学金、授業料等に限定され、2021年3月31日まで適用期間が延長されました。
未婚のひとり親の住民税
配偶者と離婚や死別をしてひとり親となった場合に、寡婦(夫)控除や住民税の非課税措置が受けられますが、未婚のひとり親に対してはこの制度の適用がありませんでした。
今回の改正で、以下に当てはまる場合は、未婚であっても住民税の非課税措置の対象となります。
1.前年の合計所得金額が135万円以下であること
2.児童は、父または母と生計を一にする子で、前年の総所得金額等の合計が48万円以下であること
3.他の者と事実上婚姻関係と同様の事情にないこと
寡婦(夫)控除については改正はされず、代わりに、臨時・特別給付金が支給されます。
FPからのアドバイス
今回の税制改正のポイントは、消費税率引き上げ対策と格差の是正と言えるでしょう。
住宅購入については、住宅ローン控除の期間延長やすまい給付金の増額などがあり、消費税率引き上げによるデメリットはほとんどないと言えるでしょう。住宅は一番大きな買い物ですので、十分な期間をかけて納得して購入するのがよいと思います。
車に関しては、エコカーなどの環境性能に優れた車は税金面で優遇されるため、購入時は金額が高かったとしても、トータルで考えるとおトクになることがあります。車の購入は、燃費のいい車、環境にやさしい車を主眼に置いて選ぶとよいでしょう。
一方で、親・祖父母から子・孫への一括贈与の非課税については、所得の制限を設けて、資金の使い道に制限をかけるなど、基準が厳しくなりました。もともと資産がある人たちが自分たちの後継へ資産を減らすことなく渡せるという意味では、格差の固定化につながるため、今回の見直しは妥当に思います。
贈与税については、もう一つ、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税枠の拡充があります。2020年3月31日までの間に親・祖父母などの直系尊属から、一定の基準を満たした住宅(消費税率10%が適用されるもの)を取得するための資金の贈与を受けた場合、これまで最大1,200万円だった非課税枠が3,000万円まで拡充されます。
この制度の非課税枠を目一杯利用したい場合は、消費税率引き上げ後の購入が有利となります。
税制改正と聞くと、なんだか難しいことのように思われるかもしれませんが、家計に大きくかかわってくる問題でもあります。これらのことを頭の片隅に入れておくことで、適切な選択ができるとよいと思います。
(※本ページに記載されている情報は2019年8月1日時点のものです)