シングル女子のA子さんは、20代終わり頃に結婚・離婚をし、以降は派遣社員として働いています。一人の暮らしに収支の面では問題はないけれど、40歳を過ぎた頃から将来の年金が気になってきたといいます。最近メディアで老後資金の話題も聞くようになって、真剣にお金を貯めていくことを検討し始めたそう。そこで、A子さんの家計をチェックし、老後資金準備に向けた家計の見直しポイントを探ります。
【FP家計簿チェック】43歳、バツイチ。ずっと派遣社員で働き、年金も期待できず老後が心配。何を節約し、お金を貯めたらいい?
2019年7月30日
今回の相談者は、シングル女子A子さん
A子さん(43歳)のプロフィール
- ・独身(結婚歴あり)
- ・一人暮らし/東京郊外
- ・年収255~280万円/手取り月収18万円~20万円
- ・貯金400万円/定期預金
都内で派遣社員として勤務。これまで数々の派遣先企業で勤め、多くの場合は外資系で事務系の仕事をしている。さまざまな会社で働ける派遣の仕事に楽しみも感じている。大手外資系の時給は悪くはないけれど、派遣期間が短めで1~2年で派遣終了となることも多い。幸い、割と次々と派遣先は決まっているけど、その度に収入・支出面の変動があり一定していないのが悩み。
趣味は旅行で毎年、海外旅行に行くのが楽しみ。
A子さんの家計簿をチェックしてわかったこと
いつかは再婚したいと思いつつ、現在までシングルで、先々どうなるかは自分でもわからないとのこと。
厚生年金は払っているけど、40歳を過ぎた頃からこのままずっと一人だったら……と老後の不安を感じ始めたそうです。離婚後すぐに個人年金保険には加入したけど、最近テレビで「老後資金が2,000万円足りない」と聞いて、自分の場合はどうなのか気になりもっと貯めないといけないのか心配になったとのことです。しかし、旅行が趣味で、毎年一度は海外旅行に出かけているA子さん。「貯金を増やすなら、旅行を諦めないといけないのでしょうか」というご相談です。
早速、A子さんの家計簿を拝見しました。
収入が変わりやすい人の場合、家計の固定費を高くしてしまうと、収入が下がったときに家計を切り詰めるのは難しいものです。その点、A子さんは「家賃」を手取り月収の23%程度に収めているのは立派です。
しかし、もうひとつの固定費である「保険料」が少し高めなのが気になります。個人年金をかけているとのことですが、契約の内容を聞いてみると、万一病気をしたときのことや老後のことを考えて、個人年金保険に医療特約をつけて契約したとのこと。若い頃から老後を考え、個人年金保険に加入したのは賢明ですが、十数年前に付けた医療特約はいまの医療事情に適しなくなっている可能性も考えたいものです。
家計や将来を考えるしっかり者と思いきや、もうひとつ気になったのが「食費」です。一人暮らしをしているわりには少し高めで、話を聞いてみると、一人だから料理するのが面倒で、毎日コンビニで何かを買って食べているとのこと。甘いものや新商品を見ると、ついつい手が伸びるそうで、出費が増えてしまうそうです。
「雑費」は住民税の支払いや、月によってはオーバーしてしまう交通費の補填にあてる費用だそう。派遣社員の場合、所得税や社会保険料は引かれますが、住民税は自分で納めなければいけない場合がほとんど。交通費も同様で、自己負担の場合がほとんどです。
老後が心配だけど、旅行も行きたい!
老後生活資金として2,000万円足りないというようなことがメディアで取り上げられていますが、実際には人それぞれに違います。それまでの公的年金加入状況や収入によって年金額は変わりますし、人それぞれの暮らし方で支出額は変わります。マネー相談などでは調査データなどを用いて標準的な値で説明することがありますが、これはあくまで老後資金の必要準備額の考え方を説明するためです。具体的な考え方は「あなたは準備大丈夫?老後に必要な金額っていくら?」の記事を参考にしてみてください。
A子さんの場合は、厚生年金に加入している期間が多くありますが、収入変動が多く、また、一時的に派遣が途絶えたときなど、国民年金に切り替えをしている時期もあります、年金加入状況が何度か変わっている場合、加入記録確認が大事ですから、ねんきん定期便できちんと確認するようにしなければいけません。また、日本年金機構の「ねんきんネット」を使って、見込みでも将来受け取れる年金額もイメージを掴んでおきたいものです。
そうして大体のイメージがわかっていれば、老後のための資産形成と趣味・旅行のための貯金にわけてお金を管理していきやすくなります。
FPのアドバイス
A子さんのご相談の柱である「老後のための資金準備」を考えると、いまの個人年金保険に加えて、本格的に老後用の積立てをしていきたいものです。現在加入している個人年金保険は年金額50万円を60歳から10年間受け取れる契約です。60歳からの無年金期間の補填が少しはできますが、現在の貯金と合わせてもまだまだ十分ではありません。
iDeCoに加入
60歳まであと17年ですからコツコツ貯金するだけでは充分にお金が増えてきません。運用&節税効果を味方につけてお金を増やすことを考えていきましょう。
派遣社員の場合、企業年金のない会社員同様、月額2万3,000円までiDeCo(個人型確定拠出年金)に拠出することができます。
限度額いっぱいiDeCoに拠出するとしたら、17年間で積立てできる元金は469万2,000円になります。積立期間中3%で運用できると仮定してシミュレーションしてみると、60歳時の元利合計額は611万931円になりました。運用益には税金がかかりませんから141万8,931円の運用益を得られる見込みです。
また、掛け金は所得控除になりますから、A子さんの平均年収が今後も250万円と仮定すると、年間4万1,400円の節税になり、17年間では70万3,800円の節税につながる見込みです(※)。
年間約4万円の節税分は、しっかり貯金に回しましょう。
※節税効果に関するシミュレーションは「国民年金基金連合会」のiDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」を使用しています。
まずは毎月1万5,000円の節約から
現在毎月2万5,000円ずつ貯金しているA子さんですが、そのうち2万3,000円をiDeCoに回すのはおすすめできません。というのも、iDeCoに払い込んだお金は原則60歳まで払い出しできません。残り2,000円では旅行のための貯金には足りませんし、ほかに入り用ができたときに困ります。
まずは食費など削減しやすいところから節約していき、iDeCoに2万3,000円を払い込んでも大丈夫なように貯金に余裕を持たせるようにしましょう。
食費は毎日コンビニで買うのをやめること。自分一人のために料理をしたくない気持ちはわからなくはないですが、自炊すれば節約効果は高くなります。それでもやっぱり面倒なときのために、スーパーで調理済みの冷凍食品を数日分まとめ買いしておくのもいいでしょう。月に数千円の節約ができるはずです。
保険も少し見直したいものです。個人年金保険は予定利率がいまより良い時代に加入しているためそのまま置いておきたいですが、医療特約や傷害特約などは、日帰り手術などもできる現在の医療事情に適していません。一人だからと日額も多めに付けていますが、公的医療保険の保障を考えれば、それほど大きな保障は要りません。いま個人年金保険についている特約を外し、新たに最低限の医療保険に加入しても良いでしょう。
今回の家計簿チェックでA子さんへの家計簿見直し提案はこのようになりました。
老後を考えていまから対策するなら、お金のことも大切ですが、健康のことも考えて、食生活を正しくするような心がけをしてはいかがでしょうか。その心がけがあれば、毎日コンビニでお弁当や甘いお菓子を買うのもやめやすくなるかもしれません。健康的な毎日を過ごすことで、病気になりにくい体質を維持しておけば老後の医療費負担も抑えられるようになるかもしれませんね。
(※本ページに記載されている情報は2019年7月30日時点のものです)