高額な医療費を支払った時に、自己負担限度額を超えた金額が払い戻される制度が高額療養費制度です。前もって医療費が高額になることがわかっている場合は、限度額適用認定書を医療機関の窓口に提示すれば、自己負担限度額までの支払いとなります。どうやったら利用できるのか、手続きの方法についてわかりやすくご説明します。
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高額療養費の申請の方法
2019年7月26日
自己負担限度額を知ろう
同一月(1日から月末まで)にかかった医療費が高額となった場合、申請をすることによって、自己負担限度額を超えた金額が払い戻されます。この自己負担限度額は、年齢や所得によって違います。
※70歳以上の方は別の算定方法となります。詳しくは厚生労働省のHPでご確認ください。
この表に出てくる「総医療費」とは、保険適用の3割負担の額ではなく、10割の医療費(下図の医療費100万円)を指します。
また、差額ベッド代などの保険外負担額や入院時の食事負担額などは医療費に含みません。
年収約370~約770万円の人であれば、総医療費から267,000円を引いた額に1%を掛けた金額を80,100円に加算するので、だいたい8万円から9万円あたりが、自己負担限度額と考えてよいでしょう。
原則として、1人ごと、各医療機関ごとの支払い額となり、入院と外来は分けて考えます。70歳未満の場合、同一世帯で21,000円以上の自己負担額が複数ある時には、それらを合算して自己負担限度額を超えれば高額療養費が支給されます。
多数該当とは
最初の表にある「多数該当」とは、高額療養費の払い戻しを受けた月数が1年間で3月以上あった時は、4月目(4回目)から自己負担限度額がさらに引き下げられる制度です。これによって、長期の医療費負担を軽減しているわけです。
高額療養費の申請の方法
高額療養費を支給申請する方法を見ていきましょう。
高額な医療費を支払った時(高額療養費支給申請)
保険証を見て、加入している公的医療保険を確認しましょう。
◆ 健康保険(協会けんぽ)の場合
1.全国健康保険協会のHPから健康保険高額療養費支給申請書を入手します。
2.高額療養費支給申請書を記入します。(記入の書き方は事項で詳しく説明します)
3.申請書に必要書類を添えて、保険証に記載されている協会けんぽ支部に郵送します。
4.各医療保険で審査された後、支給されます。(3ヵ月以上かかります)
◆ 国民健康保険の場合
1.自己負担限度額を超えた月の約3ヵ月後に、市区町村から世帯主宛てに高額療養費支給申請書が送られてきます。
2.高額療養費支給申請書を記入します。
3.申請書と必要書類、印鑑を持って市区町村の窓口に提出するか、書類を郵送します。
4.審査後、指定の銀行口座に振り込まれます。
高額療養費は申請後、各医療機関で審査した上で支給されるため、受診した月から少なくとも3ヵ月程度かかります。そのため、その期間は自己負担限度額を超えた金額を立て替えておく必要があります。立て替えが厳しい場合は、次に紹介する事前に申請する方法を行いましょう。
医療費が高額になりそうな時(限度額適用認定)
前もって、その月の医療費が高額になることがわかっている場合は、限定額適用認定証を医療機関の窓口に提示することで、自己負担限度までの支払いで済みます。認定証は申請した月の1日から有効となり、有効期限は国民健康保険の場合は毎年7月末日、協会けんぽの場合は最長1年の範囲内になります。
◆ 健康保険(協会けんぽ)の場合
1.全国健康保険協会のHPから健康保険限度額適用認定申請書を入手します。
2.限度額適用認定申請書を記入します。
3.申請書に必要書類を添えて、保険証に記載されている協会けんぽ支部に郵送します。
4.おおよそ1週間後に「限度額適用認定証」が発送されます。
◆ 国民健康保険の場合
1.保険証と本人確認書類(運転免許証等)、マイナンバーカードまたは通知カードを準備します。
2.市区町村の保険給付の窓口(役所によって違います)で申請手続きをします。
※代理申請の場合は委任状が必要です。
3.後日「限度額適用認定証」が役所から郵送されます。
申請書の記入方法と必要書類
次に申請書の記入方法を見ていきましょう。協会けんぽの申請書を例にしてご説明します。
高額療養費支給申請書
(1) 保険証に記載されている記号、番号を記入します。
(2) 保険証の被保険者の名前と住所を記入します。家族(被扶養者)の医療費であっても、保険の加入者本人の名前を書きます。
(3) 振込先を指定します。
(4) 被保険者が住民税非課税である場合はマイナンバーを記入します。※非課税者でない場合も、保険証の記号番号の記入がない場合は、マイナンバーを記入します。
(5) 診療月を記入します。月をまたいで、複数月の申請は出来ません。
(6) 受診者ごとに、医療機関、医科、歯科、入院、通院、薬局に分けて記載します。
(7) 保険診療分の自己負担額を記入します。差額ベッド代や食事代などは含みません。
限度額適用認定申請書
(1) 保険証に記載されている記号、番号を記入します。
(2) 自宅での受け取りができない場合に、希望送付先の住所を記入します。
(3) 保険証の記号番号が記入されている場合はマイナンバーの記載は必要ありません。
◇必要書類
必要書類は加入している公的医療保険によって違いがあります。事前に確認しておきましょう。
協会けんぽでは、被保険者のマイナンバーを記載した場合は、マイナンバーカード(個人番号カード)の裏表のコピーを添付が必要です。マイナンバーカードをお持ちでない場合は、個人番号を確認するための書類と本人確認書類(運転免許証など)のコピーが必要です。
高額療養費制度の注意点
高額療養費は医療機関で支払う前、支払った後、どちらのケースでも適用できますが、事後に申請する場合は、診療を受けた翌月1日から2年を経過するまでに申請を行わないと時効となってしまい、支給申請ができません。
また、高額療養費の自己負担限度額はひと月ごとに算定されるので、たとえば、年収約370~約770万円の世帯で20日間の入院費が15万円かかったケースでは、同月に20日間入院していれば、限度額を超えた部分が高額療養費として戻ってくるのに対し、月をまたいで入院(前月10日間で7万5千円、今月10日間で7万5千円)した場合は、月ごとに2回に分けて請求されるため限度額が超えていないので、高額療養費の支給はありません。このあたりは非常に悩ましいところですが、入院時期などの調整が可能であれば、できるだけ同月に寄せることを検討してみるとよいかもしれません。
高額療養費制度の申請方法を中心にお伝えしましたが、皆さんの疑問は解決できたでしょうか。いざという時のために、しっかりと頭に入れておきたい制度ですね。
(※本ページに記載されている情報は2019年7月26日時点のものです)