「医療費控除」という言葉はみなさんもご存知だと思います。1月1日~12月31日までの1年間にかかった医療費が10万円以上であった場合、還付申告を行うことで負担した医療費の一部が戻ってくる税制度です。この医療費控除は妊娠・出産費用にも適用できることをご存知ですか?対象となる費用、ならない費用をきちんと理解して活用してみてください。
ママFPが指南!【2019年版】妊娠・出産費用
「医療費控除」の対象になるもの、ならないもの
2019年6月9日
医療費控除とは?
医療費控除とは毎年1月1日~12月31日までに支払った医療費が10万円を超えた場合、支払った医療費の額をもとに所得控除を受けることができる制度です。総所得が200万円未満の人は10万円を超えていなくても、総所得金額の5%の金額を控除することができます。
医療費控除を受けるには?
医療費控除を受けるためには確定申告書を作成し、税務署へ還付申告をする必要があります。税金を納める人の確定申告は1月1日~12月31日までの所得を翌年の2月16日~3月15日に申告する必要がありますが、還付申告の場合は還付することが発生した(今回を例にあげると医療費控除が発生した)翌年の1月1日~5年間提出することができます。
還付申告は5年間さかのぼって申告することができます!妊娠・出産の時期は自分の体調の変化と赤ちゃんのお世話で何かと忙しい時期を過ごします。領収書はきちんと保管しておき落ち着いてから申告することもできますので、5年間さかのぼれることを覚えておくと安心ですね。
医療費控除の対象者
医療費控除の対象となる人は生計を一にする配偶者や子ども、その他の親族です。同一世帯ではなく、仕送りなどで親族を世帯の財布で支えている場合、その親族も対象となります。
医療費控除は所得が高い人の税率で計算した方がおトク
所得税は累進課税といって所得の割合に応じて課税される税率が異なっています。所得が高い人ほど高い割合の税率がかけられるため納める税金も高くなります。そのため、医療費控除は共働き家庭であっても世帯で合算できるため、所得の高い人で申告した方が控除効果は大きくなります。
妊娠・出産に関わる費用で医療費控除の対象となるもの
医療費控除の対象となるものは医師の判断などにより治療を目的としたものを対象としています。国税庁のホームページには「医療費控除の対象となる医療費」として項目を定めています。また「医療費控除の対象となる出産費用の具体例」としても項目を定めています。詳細を確認したい方は国税庁のホームページを参考にしてみてください。
入院・出産費
出産を例にあげた場合、出産してから数日間入院することになります。それらにかかる費用は医師によって決められた治療と判断され医療費控除の対象となります。帝王切開や無痛分娩といった手術代も対象となります。
入院費や入院中の食事代も医療費控除の対象となりますが、食事は他から出前をとるなど病院側から決められた食事以外のものは対象とはなりません。赤ちゃんの入院費も医療費控除の対象となります。
入院・出産費用については健康保険から出産育児一時金など助成金が支給されます。医療費控除はこれら助成金を差し引いた差額を申告することになります。
交通費
妊婦検診に行くときに電車やバスを利用して支払った交通費は医療費控除の対象です。領収書を残しておくことは難しいため、手帳や家計簿などに記録を残しておくといいでしょう。出産の場合には、電車やバスといった通常の交通手段による移動が困難なためタクシー代も医療費控除の対象となります。
医師の判断で治療となる例
妊娠すると初期にはつわりに悩む人も多くいます。つわりによる点滴治療を受けたなどの処置は治療に該当するため医療費控除の対象となります。切迫早産などで入院した場合も医療費控除の対象です。不妊治療や人工授精といった妊娠に該当する前の治療であっても医師の判断のもと行われている治療であれば医療費控除の対象となります。
妊娠・出産に関わる費用で医療費控除の対象とならないもの
健康目的や美容目的といった治療を目的としていない費用は医療費控除の対象とはなりません。妊娠・出産に関わる費用もこの観点から医療費控除の対象とならない費用を説明します。
保険や助成金などから費用が支給されているもの
医療費控除に該当する項目に当てはまっていても、その費用が助成金や保険金から支払われている場合、医療費控除の対象とはなりません。ただし負担した費用が助成金や保険金より多く、差額が発生している場合その差額分は医療費控除として申告できます。
里帰り出産にかかる交通費
治療の観点から考えてみると分かるとおり、里帰り出産は治療に該当しないためそれにかかる交通費も医療費控除の対象とはなりません。
個室
入院や出産の際に個室を利用した場合、差額ベッド代といわれる部分については医療費控除の対象とはなりません。ただし医師の判断で感染症などの疑いで個室を余儀なくされた場合は医療費控除の対象となります。
パジャマや洗面用具などの身の回り品
入院に際して購入したパジャマや洗面用具などの身の回り品の購入費用も治療を目的としていないため医療費控除の対象とはなりません。
いかがでしたでしょうか。妊娠・出産費用で医療費控除の対象となるか、ならないか判断に迷ったときは「治療を目的にしているか」を考えてみてくださいね。どうしても判断がつかない場合は税務署に相談したり、税務相談を利用したりしましょう。