健康保険の加入から保険料納付まで会社がやってくれる会社員とは違い、フリーランスではすべてを自分自身で行わなくてはなりません。
実はフリーランスの人が加入できる健康保険はいくつかありますが、選び方によってお財布事情に差が出るのはご存知でしょうか?
保障をしっかり保ちながらよりお得に加入するために、どんな健康保険の選び方をするのがいいか、こっそりお教えします。
フリーランスの健康保険、
選び方で変わるお財布事情とは?
2019年3月9日
フリーランスの人が入れる健康保険って?
まずは、フリーランスの人が入れる健康保険にはいくつかあることを知っておきましょう。
任意継続被保険者
退職日までに継続して2カ月以上の被保険者期間がある人は、これまで会社で加入していた健康保険を最長2年間まで任意継続することができます。
任意継続すると、原則として在職中と同様の保険給付が受けられます。ただし、健康保険の傷病手当金や出産手当金は、病気や出産などの理由で会社を休んだ人に支給されるものですから、会社に属さないことになった人は、一定の場合をのぞき、これらの給付はなくなります。
傷病手当金や出産手当金について、「どういう制度?」と思う人は「知らないともったいない!ピンチの時にお金が戻ってくるうれしい制度」、「こんなにあるの?出産・育児で貰えるお金」の記事を参考にしてみてくださいね。
国民健康保険
都道府県が運営して市区町村が窓口になる国民健康保険は、会社の健康保険に加入できないすべての人が加入できる公的医療保険です。
保険の給付内容は健康保険とほぼ同じですが、傷病手当金や出産手当金はありません。
文芸美術国民健康保険組合
フリーランスとしての活動内容によっては、文芸美術国民健康保険組合に加入できる人もいます。
文芸美術国民健康保険組合は、文芸や美術、著作活動に従事している、かつ組合加盟団体への加入者とその家族が加入できる国民健康保険です。組合加盟団体には(公社)日本グラフィックデザイナー協会、日本写真家協会など70近くの団体があります。
保険の給付内容は国民健康保険法に定められた給付ですから自治体の国民健康保険とほぼ同じです。
選ぶ保険で保険料がこんなに違う !?
紹介した3つの健康保険はどれも、傷病手当金や出産手当金がなくなる以外は、会社の健康保険とほぼ同じです。だったらどれを選んでも変わらないと思いがちですが、選び方によって保険料に差が出ます。
任意継続被保険者
会社員時代は保険料の半分を会社が支払ってくれていましたが、全額が自分の負担になります。退職時の標準報酬月額で任意継続後の保険料が決定されることになりますが、ざっくり2倍程度で考えておけばいいでしょう。
仮に、40歳未満の人で標準報酬月額が20万円(報酬月額19.5万円~21万円)、東京都の協会けんぽの場合、任意継続の月額保険料は19,800円(2019年度)となります。
国民健康保険
自治体によって保険料が異なります。「加入者の所得」と「世帯の国保加入者数」を元に保険料が算出されますが、保険料率や、国保加入世帯が一律で支払う「世帯割(平等割)」の金額などが自治体によって差があります。
計算基準となる所得は前年のものを使用します。
仮に、40歳未満・東京都練馬区在住の一人暮らし、前年所得が250万円の場合、年間258,018円(2018年度)、1カ月にすると約21,500円となります。
文芸美術国民健康保険組合
所得に関係なく保険料が一律です。年度ごとに見直しはありますが、2018年度は組合員が月額19,600円、家族が1人当たり月10,300円です。
所得状況に応じて切り替えも検討を
前述したように、国民健康保険は自治体によっても保険料が違いますから、一概にどれがおススメというのはここでは言えません。
上の例では文芸美術国民健康保険組合が最も安く、おトクに思いがちですが、当国保に加入するためには組合加盟団体へ加入していなければなりません。それぞれの団体では入会金や年会費が必要となるのが通常ですから、その分も含めて検討しなければなりません。
自治体の国民健康保険は前年所得で保険料が計算されますから、会社員時代の前年所得が多ければ国保に加入してすぐの保険料は高くなる可能性があります。しかし、一般的にはフリーランスになってすぐは所得が低めの場合が多いですから、国保に加入して2年目の保険料は下がる可能性があります。
任意継続に加入できるのは最長2年間ですから、3年目には他の健康保険に切り替えしなくてはなりません。
上記の例の通りなら、1年目は任意継続をしておき、2年目フリーランスの所得が会社員時代より少ないようなら国保に切り替える方法もあります。数年経って所得が増えた頃、国保の保険料がまた高くなりそうなら文芸美術国保に加入するのもいいでしょう。
まずは退職する前に、市区町村の担当部署に国保の保険料を確認し、任意継続の場合と比較してみることからはじめましょう。単に退職後だけの切り替えを考えるのではなく、フリーランスの活動(所得)アップにお財布事情(保険料)を応じさせるよう、健康保険を切り替えていくのがおススメです。
なによりも、退職後にもしも具合が悪くなって病院に行く事態になっても大丈夫なように、早め早めの行動でスムーズな手続きを心がけてくださいね。