夫婦にとってのベストな関係に、一つだけの正解なんてありませんよね。
例えば、何でも話し合える夫婦関係がよいと考える人もいれば、お互いのために隠し事はあるのが当然と考える人もいます。
共働きスタイルの家庭では、お互いの給与の額を知らないというケースさえあります。
結婚をすると、夫婦のお金がすべて共有になると思っている人もいるでしょう。
夫婦共有とはならないお金、特有財産についてご紹介します。
特有財産って何?
~結婚にまつわるお金の基礎知識~
2019年2月19日
夫婦とお金の関係
夫婦によってスタイルはさまざま
結婚をして夫婦になると、2人で共有財産を築いていく生活が始まります。だからといって、使うお金などのことをお互いがすべて把握するようになるかというとそうでもなく、ケースバイケースで夫婦ごとに異なります。
【夫婦とお金の関係の例】
・夫の年収を妻がだいたいしか把握しておらず、毎月の生活費を渡されている
・夫婦ともにお互いの収入(や貯金)を把握している
・夫婦それぞれの収入(や貯金)をお互いに把握しておらず、別会計である
・夫がお金に無頓着で妻が全面的に管理している
毎日問題なく生活でき、貯金もできているなら夫婦間のお金の扱い方はそれぞれのスタイルでよいものです。夫婦のお互いの性格とお金の管理能力を反映させながら決められるとうまくいくでしょう。
不安や不満が生じるケースも
残念ながら、お金の扱い方が問題となり結婚生活に不安や不満を持つ夫婦もいます。お互いの持つお金や使うお金の額を知ることが夫婦トラブルの原因になるケースもあれば、知らないことが原因になるケースもあります。
【夫婦が不満を抱えるお金の問題の例】
・妻の収入をあてにして夫が趣味にお金をつぎ込む
・夫が十分な生活費を渡してくれないと妻が感じている
・妻が十分な小遣いを渡してくれないと夫が感じている
・妻がお金を使いすぎているのではないかと夫が感じている
お金のことを夫婦間でオープンにすればいい、あるいは隠すようにすればいいと単純に決められないのが夫婦のお金問題の悩ましいところですね。
なお、配偶者が使うお金の額を把握できることには、配偶者のある程度の行動範囲や価値観を知る手段にできるという面もあります。使える金額によって飲み会参加などによる交際範囲が変わり、どの程度の金額の物を購入できるかも変わるためです。
夫婦共有とならない財産もある
結婚前に貯めたお金は特有財産
夫婦のお金の問題を考えるとき、結婚前に貯めたお金の扱いはどうなるのだろうという疑問が湧く人もいるでしょう。
例えば、夫婦ともに200万円ずつの貯金をしていたとしたら共有財産として合わせてもいいと思えるかもしれませんが、一方が1,000万円、もう一方が50万円という貯金額のケースもあり得ますよね。
実は、夫婦の共有となる財産とならない財産については法律(民法762条)で定められており、結婚前の貯金は個人で有する特有財産となります。結婚後であっても、自己の名で得た財産は特有財産となります。
相続や贈与で得た財産も特有財産
結婚後に自己の名で得る財産とは、どんなものでしょうか。例えば親から相続することになった財産や贈与された財産は特有財産です。そのため、このような特有財産を得たケースで配偶者に打ち明けるかどうかを悩む人が少なくありません。夫婦であっても、打ち明けた後に配偶者がどんな反応をするか予想できないケースも十分考えられますね。
妻に多額の相続財産が入ったと知った途端に、真面目で節約家だと思っていた夫の金遣いが荒くなり、妻を失望させるという残念な例も見られます。お金には人を変えてしまう力もあるため、夫婦間であっても慎重に扱う心づもりをしておきましょう。
家庭を大事にする気持ちとともに
長期的な視点を持って判断したい
特有財産を持つ妻が夫に話して生活費に使おうと、夫に話さずに持っていようと、家庭を大事にする気持ちを持った上で自分自身が納得できていれば何の問題もありません。ただし、使った後に別居や臨時出費などの問題が起きてしまい、「あのお金をとっておくべきだった」とならないよう長期的な視点を持つ冷静さも必要です。
筆者の場合、結婚して間もなくのころに義理の母から「独身時代の貯金額を(夫に)言う必要はないわよ」とアドバイスされ、当時は特有財産の知識もなく不思議な感覚がしたものでした。結婚生活の先輩の話として、そういうものかと納得したことを覚えています。
相続財産は配偶者控除の条件に関係しない
夫の所得税の計算において控除対象配偶者となっている人が、親から相続財産をもらったことで控除対象から外れてしまうのではないかと心配するケースがあります。控除対象配偶者でなくなることをきっかけに夫に相続財産の存在を知られてしまうのではないかと思ってしまうようです。
しかし、相続財産は承継で所得ではないため、所得税とは異なるルールで課税されるので、配偶者控除の対象となる条件の一つである合計所得上限に何の影響もありません。贈与財産の場合も同様です。
夫婦にとっての理想の結婚生活スタイルは、それぞれの夫婦で築き上げていくものです。お金が原因で夫婦関係にひびが入る例もあるため、お金にかかわる内容を夫に話すかどうか迷ったときは安易に答えを出さず、長期的な視点を持って判断しましょう。