会社員や公務員にとって、払いすぎた税金を取り戻すチャンスの年末調整。一般的には11月中旬頃から始まりますが、年末調整の時期は会社によってさまざまですから、書類の提出が間に合わなかった……という人もいるかもしれません。
もしも年末調整に書類を出し忘れて、間に合わない場合はどうなるのでしょうか?
あなたの会社ではもう終わった?
年末調整の時期を過ぎたらどうなる?
2018年11月17日
年末調整ってどうお得なの?再確認してみましょう
会社員は毎月の給料から税金が引かれていますが、これはあくまで概算の金額です。そもそも所得税は、毎年1月から12月まで1年間の所得をもとに金額が決められますが、単に1年間にもらった給料やボーナスの金額だけではなく、「個人の事情」も勘案しながら決められます。
個人の事情というのは、たとえばこれらのものがあります。
- ・家族(配偶者)を扶養しているか
- ・保険には入っているか
- ・住宅ローンを払っているか
- ・将来の年金資産形成をしているか
- ・多額の医療費を払ったか
など。
ほかにもさまざまありますが、これらの個人の事情は本来、自分や家族しかわからないもの。従業員の給料から税金を徴収する会社にとって、あらかじめ従業員個々の事情を把握して、徴収事務を行うのは煩雑過ぎる仕事です。
加えて、1年間のうちに結婚したり、子どもが生まれたり、病気になって入院したり……というのは、おそらく本人にとっても、年末になってから振り返ってみないとはっきりわからないこともありますね。
そこで、月々の給料やボーナスからは概算で計算した税金を引いておき、年末になってから最終的な納税金額を再計算し、精算することになっています。これが「年末調整」です。
年末調整はおトクなの?
先ほど「個人の事情」と述べましたが、上記したような事情があれば「所得控除」を申請することができます。たとえば、家族(所得や年齢条件があります)を扶養していたら「扶養控除」、生命保険料を払っていたら「生命保険料控除」など。所得控除そのものは全部で14種類ありますが、自分に関係する控除を申請することで、最終的な納税額が少なくなるのです。
仮に課税される所得の金額が180万円で、税率が5%だとしてみましょう。この場合の納税すべき金額は、
180万円×5%=9万円
しかし、ここから10万円分の所得控除を申請できると仮定してみましょう。
そうすると、納税すべき金額は、
(180万円-10万円)×5%=8万5千円
つまり、年末調整で10万円分の所得控除の申請をすることで、5千円おトクになるということです。別の言い方をすれば、本来、8万5千円でよかったものを9万円払っていたから、年末調整で所得控除の申請をしなければ損をする、ということなのです。
年末調整はいつまで?
会社で年末調整処理を担当している人でなければ、一般的には知られていないことですが、年末調整の期限といっても、「従業員が会社へ書類を提出する期限」と「会社が一連の書類を税務署に提出する期限」があります。
通常、年末調整の期限と言われているのは「従業員が会社へ必要書類を提出して、所得控除の申請をする」までを言いますが、実は会社によって異なります。
一般的には11月中旬から下旬までとすることが多いよう。この、決められた日までに会社から配られた「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」と「扶養控除等(異動)申告書」に必要項目を記入して、生命保険料控除証明書などの必要書類を添付して会社に提出します。
年末調整には何が必要?
あなたがどんな所得控除を受けられるかによって、必要書類は異なります。ここでは代表的なものをいくつか挙げてみます。
生命保険料を払っている
保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」が必要です。加入している保険の種類や内容によって「一般生命保険料」、「介護医療保険料」、「個人年金保険料」に分けられます。
地震保険料を払っている
保険会社から送付される「地震保険料控除証明書」が必要です。
マンションのローンを払っている
住宅ローンを払い始めた最初の年は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を申請できます。ローンを借入れしている金融機関から送付される「住宅ローン残高証明書」と、税務署から送られている「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」が必要です。
iDeCoに加入している
まだ新しい制度のiDeCo。iDeCoの掛け金は全額が所得控除できます。せっかく加入しているなら忘れずに年末調整で申請しましょう。
国民年金基金連合会から送付される「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要です。
期限を過ぎるとどうなる?
申請できる所得控除を忘れていたり、郵便事情で送られてくるはずの控除証明書が届かなかったり……などの理由で決められた期限までに間に合わないということもなくはありません。前述したように、「従業員が会社へ書類を提出する期限」のあと「会社が一連の書類を税務署に提出する期限」があります。会社に少し待ってもらえそうか、担当者に相談してみましょう。しかし、会社側も従業員全員の納税額を再計算し、書類を作成、税務署に提出するという煩雑な作業があります。できるだけ早く提出するよう、マナーを大切にしましょう。
それでも間に合わないようならば、自分自身で確定申告をすることになります。確定申告は、原則、翌年の2月16日から3月15日までです。この時までに必要なすべての書類を揃えておきましょう。
普段、会社に行っていて税務署に出向けない人は、インターネットからでも確定申告が可能です。国税庁の専用ページから確定申告できますよ。
年末調整でいくらおトクになるかは人それぞれですが、そもそも税金を払いすぎる必要はありません。年末調整で払い過ぎの税金が少しでも還付されたら、1年間の労をねぎらい、自分にプチご褒美をしてみるのもいいですね。