今年は災害が多い年でした。皆さんの中にも残念ながら台風や地震の被害を受けたという人もいるでしょう。
一方、幸いにも被害を受けなかった人の中には、寄附をしたという人もいるのではないでしょうか。
被害を受けた人も寄附をした人も、所得控除を利用して税金を取り戻しましょう。
被害を受けた人も寄附した人も
所得控除を知って税金を取り戻す
2018年10月28日
年末調整って?
会社員や公務員は、毎年この季節になると職場で年末調整の書類を提出します。
まずは、年末調整について簡単におさらいしておきましょう。
皆さんに毎月支払われている給与やボーナスからは、社会保険料や税金が天引きされています。そして、天引きされている税金の中に所得税があります。
この所得税は、1年間働くという仮定のもとで、その人の所得によりおよその額を天引しています。正確な税金額がわかるのは1年が経過した時で、実際の所得額をもとに今まで天引きした税金額を計算し直します。
そして、所得税を払い過ぎている人は還付され、所得税の支払いが足りない人は追加で支払うという仕組みです。
どんな時に税金が返ってくるの?
先ほど、所得税を払い過ぎた人には税金が還付されるとお伝えしました。では、どんな場合に税金が還付されるのでしょうか。
所得税額はどうやって計算されるの?
まずは、所得税額が決まる仕組みをみていきましょう。
会社員や公務員は、給与収入(年収)から、まずは給与収入の金額によって決められた給与所得控除がひかれます。その引かれたものが「給与所得」といわれ、そこから所得控除を差し引いた「課税所得」に対して、税率をかけたものが所得税として納める額になります。
つまり、できるだけ多くの所得控除を差し引くことで課税所得が少なくなり、納める所得税が少なくなるという仕組みです。
所得控除、何があるの?
給与所得から差し引くことができる所得控除は全部で14種類あります。
所得金額が同じ人でも、扶養家族の人数や配偶者や障害者がいるかなど、個人の状況によって差し引ける控除額が変わってきます。
まずは誰もが必ず差し引くことができるのが基礎控除です。
そして、家族構成などによって変わってくるのが、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、勤労学生控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除です。
次に、支払った物に対して変わってくるのが、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、雑損控除、寄附金控除です。
皆さんの中にも、年末調整の書類と共に、生命保険会社から届いたハガキを添付する人がいるかと思いますが、それは生命保険料控除を受けるためなのですね。
年末調整で処理できない控除は?
先ほどお伝えした所得控除の中には、年末調整で処理できないものがあります。 それが、医療費控除、雑損控除、寄附金控除です。
これらの控除を利用するためには、確定申告が必要です。確定申告は翌年の2月16日から3月15日ですが、還付は翌年の1月1日からできるので、確定申告で混み合う前に手続きをしてしまうといいですね。
災害に遭った人、寄附をした人はこちら
還付の手続きが必要なのは先ほどお伝えした3種類ですが、今回は今年災害を受けた人と災害により寄附をした人に向けて、雑損控除と寄附金控除について詳しくお伝えしていきます。
雑損控除
自然災害や盗難、横領などによって個人の資産について損害を受けた人は雑損控除を差し引くことができます。ただし詐欺や恐喝は対象外です。
雑損控除額は①か②の多い方の金額です。
①差引損失額(※1)-総所得金額×10%
②差引損失額のうち災害関連支出の金額(※2)-5万円
※1:差引損失額=損害金額の合計+関連したやむを得ない支出の金額-保険金等により補填される金額
※2:災害関連支出の金額=災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額
損害額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合は翌年以降(3年間が限度)に繰り越して、その年の所得金額から控除することができます。
確定申告には、災害等に関連したやむを得ない支出の金額領収書が必要なので大切に保管しておいてくださいね。
寄附金控除
幸い自身は被害を受けなくても、被災地に寄附をした人もいるでしょう。国や地方公共団体などに寄附をした場合は寄附金控除をうけることができます。
寄附金控除額は次のいずれか低い金額から2,000円を差し引いた額になります。
①その年に支出した特定寄附金の額の合計額
②その年の総所得金額等の40%相当額
寄附金控除を受けるためには、寄附をした団体などから交付された寄附金受領書や領収書が必要です。
最近人気があるふるさと納税も寄附金控除の対象になります。
ふるさと納税を利用して、被災地に寄附をしたという人もいるでしょう。
ふるさと納税に関しては、年収2,000万円以下の会社員が寄附をした自治体が5カ所以下である場合に、ワンストップ特例制度を利用した場合は確定申告をしなくても自動的に税金が安くなります。
ただし、医療費控除や雑損控除がある人は従来通り確定申告が必要です。
このように申告をすることで利用できるおトクな制度があります。
ぜひ税金の仕組みを知って、払い過ぎた税金を取り戻してくださいね。