最近社会問題となりつつある、奨学金が返せなくなり破産する“奨学金破産”は、意外と身近な問題です。子を持つ親なら、子供の教育費について一度ならずとも頭を悩ませた経験があることでしょう。今や2人に1人が利用しているという奨学金、よく理解しないまま借りてしまったということがないように、ここでおさらいしてみましょう。
奨学金破産ってなに?
知っているようで知らない
奨学金についておさらいしよう!
2018年4月11日
奨学金の基礎知識
日本はほとんどが「貸与型」
奨学金には「給付型」と「貸与型」の2種類があり、「給付型」はいわゆる返さなくてもいい奨学金、「貸与型」は返済が必要な奨学金です。しかし、日本で言う奨学金はほとんどが「貸与型」で、ようやく政府は今年度から本格的に給付型奨学金の導入を始めましたが、受給要件(所得と成績)が厳しく、今のところ限定的なものとなっています。
貸与型には無利子のものと有利子のものがある
最も多くの人が利用しているのは日本学生支援機構の貸与型の奨学金で、利息の付かない第一種奨学金と利息が付く第二種奨学金、また入学初年度に一時金として借りられる入学時特別増額貸与奨学金(利息付)の3つがあります。
第二種奨学金の利息の上限は3%となっており、現在の利率は0.23~0.27%程となっています。(在学中は無利息)
審査は第一種奨学金の方が厳しく、成績、収入状況で制限がかけられています。第二種奨学金は収入基準さえ満たしていれば、誰でも利用できることもあり、奨学金利用者の7割以上は第二種を利用しているようです。
奨学金の落とし穴
奨学金は借金である
今や2人に1人が利用している奨学金ですが、あまり、借金という認識がなく借りてしまう人もいるかと思います。
第二種奨学金を月8万円利用した場合、年間で96万円、大学卒業までの4年間で384万円もの借金を背負うことになるのです。この金額を0.23%の利率で20年間かけて返済すると仮定すると月16,390円の返済となります。
この金額を見て大したことないと思えればよいのですが、就職がうまく行かずに無収入になったとしても、払って行かなければならないのです。
延滞金が追い打ちをかける
奨学金の返済が滞ると、延滞金が課せられます。延滞金は年率で計算され、滞納1日ごとに延滞金が増えます。
<年率÷365(日)の日割り計算>
延滞金の年率は平成26年3月27日までは年10%、平成26年3月28日以降は年5%となっています。※
※この年率は第一種奨学金の場合は平成17年4月以降採用のもの、第二種奨学金の場合は平成10年3月以降に貸与が終了しているものの年率となります。
第二種奨学金の場合は、通常の利息に延滞金の利息が上乗せされるため、滞納が長引けば長引くほど、返済が苦しくなっていきます。
さらに、一定期間を超えると個人信用情報機関に個人情報が登録されてしまいます。ここに登録されると、クレジットカードの審査が通らなかったり、住宅ローンが組めなくなる可能性もあり、これから社会に出ていく若者にとって、奨学金が最初の足かせになってしまうケースがあります。
最後は奨学金破産
次の項目で紹介する救済手段をとっても、返済が出来なくなってしまった場合は、自己破産をして返済を免れるしかありません。奨学金が原因で自己破産したケースは過去5年間で延べ1万5千人にのぼり、社会問題となっています。
奨学金の返済が難しくなってきたら
奨学金の返済が滞りそうになってきたら、以下の救済制度を検討してみましょう。
減額返還
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に、月々の返済額を2分の1または3分の1に減額して、その分、返済期間を長くして返済する方法です。1年ごとに申請が必要で、最長で15年延長できます。
返還期限猶予
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に、一定期間返還期限を延期する制度です。最長で10年、返済を待ってもらえますが、1年ごとに申請が必要です。
順序としては、先に減額返還を検討してみて、それでも厳しいようであれば、返還期限猶予を利用してみましょう。
いずれも、自己申請で利用できる制度なので、延滞する前に、これらの制度を早めに検討してみることが大事です。
また、これらはあくまでも猶予であって、免除ではないので、返済額が減るわけではありません。将来、安定的な収入が得られることを期待しての一時しのぎ的な方法であることを忘れないでください。
自己破産の連鎖を起こさないために
上記の制度があっても根本的な解決にならずに、自己破産という最悪の事態になってしまった場合、本人は奨学金の返済が免除されますが、返済責任は連帯保証人に移ります。
親や親族が保証人になっていた場合、保証人も返済が出来ずに自己破産するという、自己破産の連鎖が問題となっています。
元々、親が子供のための学費を出す余裕がないために奨学金を利用しているわけですから、この自己破産の連鎖は起こりやすいと言えます。
こうした連鎖を防ぐためには、連帯保証人に親や親族を立てず、機関保証を利用することで防ぐことができます。
機関保証
機関保証の保証料は、毎月の奨学金から天引きのような形で引かれます。
第二種奨学金を月額5万円で4年間借りた場合の保証料は月額2,117円となっています。(平成29年度採用者の保証料)つまり、奨学金の手取りは47,883円となります。決して安くはありませんが、保証人の経済状況が厳しい場合は、機関保証の利用をおすすめします。
ひと昔前は奨学金をもらって勉強をしている人は、少数の優秀な学生という印象がありました。しかし、現在は半数の人が奨学金を利用して大学に行き、そこまでして大学を出たとしても、充分な収入を得られない状況に置かれる人が多くいるのが実情です。
奨学金が原因で自己破産をするなどというのは、これから社会に出ていく若者の未来にしてはあまりにも残酷です。
今後は、日本ではまだまだ少ない給付型の奨学金の拡充に期待し、個々では、人生設計をしっかり立て、将来に結びつく学びのためにお金を借りるという意識で、奨学金を利用してほしいと思います。