「親が入院したので入院費を支払いたい」「親が認知症になりつつあるので、親の預金やお金の管理をどうしよう」「親が急死してしまった」など、、、あっては欲しくないことですが、こういった場合、親の預金を引き出すにはどうしたら良いのでしょう?何か手続きが必要なの?準備すべきものがあるの?もしもの場合に備えて、今から知っておくべきこと、今から準備できることなど、詳しくご紹介します。
親の預金を引き出したい
あんな時こんな時、何が必要なの?
2019年8月16日
「親のお金を引き出す」ってどんな時?
「親の預金を引き出す」とは、通常は親自身が管理している親名義の預金を、何かの事情があり親自身が引き出しに行けない時、親からの依頼があり、代わりに引き出すことを指します。
例えばどんな時でしょう?
・親が体調を崩して動けない時
・親が入院して銀行に行けない時
・認知症になり親自身がお金を管理することが困難になった時
・親自身が死亡した時
「親の預金を引き出す」多くの場合は、こういった時です。
当然の事ですが、親子とはいえ、親名義のお金はあなたのものではありません。親の預金を勝手に引き出す行為は認められません。あくまで、親からの依頼があることが前提です。
あんな時こんな時、何が必要なの?
「親の預金を引き出す」場合に、必要な手続きや、必要な書類等があるのでしょうか?あんな時こんな時、詳しくご紹介していきます。
動けない時
例えば、体調を崩し寝たきりで立ち上がれない時、足腰を痛めて歩行困難な時、入院生活が続き銀行に行けない時などです。この場合、親自身の意思は確認できるので、親に依頼されて代わりに預金を引き出す行為なので認められます。
ATMでの引き出しであれば、キャッシュカードと暗証番号が分かれば、通常通り引き出すことができます。但し、ATMからの引き出しは、一度に引き出せる上限額があるのでご注意ください。
窓口での引き出しには、通帳や印鑑はもちろん、親からあなたが依頼された証明となる「委任状」と、委任されたあなたの「写真付き身分証明」が必要になります。ほとんどの銀行が委任状をHPからダウンロードが必要です。各銀行指定の委任状に親自身のサインと押印をして持っていきましょう。
認知症になった時
「親の預金を引き出す」には、親自身の意思があり、親から依頼されて代わりに引き出すのが前提です。認知症になった場合、初期段階であれば問題ないかもしれませんが、今後症状が進み、お金の管理も困難になり、あなたに依頼するといった意思がなくなる可能性もあります。
銀行側は「成年後見制度」の利用を勧めてくることも考えられます。(「成年後見制度」については、次の項で詳しく説明します。)親本人の意思があり、通帳や印鑑、キャッシュカード、暗証番号の管理もでき、委任状を親自身が書けるうちに、今後の事を考えて「成年後見制度」等の手続きを整えておくことも大切です。
死亡した時
親が死亡した後は、当然、親自身の意思がないので「親の預金を引き出す」行為は認められません。銀行側も口座名義人の死亡を知った段階で口座を凍結します。その理由はこの預貯金が、死亡後の相続や遺産分割協議の対象となるからです。
しかし、今年の7月1日から改正民法が施行され、口座を凍結した後でも一定額であれば預金を引き出すことが可能になりました。
その金額は、【 預金額 × 1/3 × 相続人の法定相続分 】
例えば、相続人が長男と次男の2人で、預金が600万円の場合、長男が預金を引き出せる額は、600万円×1/3×1/2=100万円です。ただし、一つの金融機関につき150万円が上限です。
もしものために知っておきたい制度
成年後見制度
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方を保護し支援する制度です。例えば、不動産や預貯金などの財産管理や遺産分割協議、介護などのサービスや施設入所に関する契約などが必要な時に、本人に不利益や被害がないよう保護し支援する制度です。
この成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。
「法定後見制度」とは、家庭裁判所で選ばれた人が、本人の代理人として契約を交わしたり、法律行為に同意したりできます。この制度は「後見(判断能力が欠けているのが通常状態の方)」「保佐(判断能力が著しく不十分な方)」「補助(判断能力が不十分な方)」の3つに分かれていて、本人の程度に応じて選べます。
任意後見制度
前項の「成年後見制度」の中の1つで、本人が十分な判断能力があるうちに本人自らが選んだ代理人に、自分の生活、療養や看護、財産管理に関する手続きの代理権を与えることを、公正証書に定めておくものです。
この代理人(後見人)は、血縁者に限らず誰でもなれます。最近は、内容が複雑だったり、血縁者が離れて暮らしていたりで、専門家にお願いするケースも増えているようです。
生前贈与
死亡後の相続ではなく、生きている間に預貯金等の財産を贈ることです。相続と生前贈与の大きな違いは、「税金の種類」と「贈る対象になる人」。
税金の種類は、死亡後の相続は「相続税」、生前贈与は「贈与税」です。
送る対象になる人は、相続は「法定相続人」ですが、生前贈与は「贈与者が決めた人」です。法定相続人であろうがなかろうが、生きている間に「この人に贈りたい」と思えば、生前贈与は誰にでもできるのです。
親の預金を引き出したい時に必要なあれこれをご紹介しました。これをきっかけに、親子や兄弟姉妹で、もしもの場合に備えて、話し合ってみてはいかがですか?
(※本ページに記載されている情報は2019年8月16日時点のものです)