健康な時にはなかなか考えが及びませんが、病気やケガで入院した時のお金の問題については、今のうちから真剣に考えておく必要があるでしょう。公的医療保険のおかげで3割負担で済むとは言うものの、入院は思った以上にお金がかかります。保険に入っているから大丈夫と思っていても思わぬ落とし穴があるかもしれません。いざという時に慌てないためにも、今からできる準備をしておきましょう。
長期入院に備えるにはどうしたらいい?
医療費と保険の話
2019年11月17日
長期入院の備えは必要か
短期の入院であれば、貯金で凌げそうですが、長期入院となると医療費が積み重なるだけでなく、働けなくなることでの収入減も大きな問題です。果たして、長期入院となる可能性はどのくらいあるのでしょうか。データを基に考えてみましょう。
入院日数の平均はどのくらい?
厚生労働省の2017年患者調査の概況によると、入院の平均日数は年々短くなっており、2017年では病院、一般診療所を合わせて、29.3日となっています。
出典:厚生労働省2017年「患者調査の概況」
割合を見てみると、7割近くが2週間以内に退院しており、96.3%が3ヵ月未満の入院となっています。
<在院期間別の推計退院患者数の構成割合(病院)>
出典:厚生労働省2017年「患者調査の概況」より抜粋
1ヵ月以上の入院を長期入院と考えた場合でも、16.2%しかなく、長く入院するケースは少ないと言えるでしょう。
長期入院になりやすい病気は?
長期入院の割合は少ないことがわかっても、まったくないわけではありません。どんな病気が長期入院になりやすいのか、下の表に示しました。
出典:厚生労働省2017年「患者調査の概況」を基に筆者が作成
これを見ると、精神及び行動の障害や神経系の疾患が非常に長期化していることがわかります。他では循環器系、呼吸器系の疾患が長めとなっています。悪性新生物、いわゆるガンは長期入院が必要と思われていますが、意外と短く17.1日となっています。
1日入院したらどのくらいかかる?
<入院1日あたりの自己負担費用>
出典:2019年「生活保障に関する調査」|公益財団法人 生命保険文化センター
平均が23,300円となり、思った以上に費用がかかると感じたのではないでしょうか。これは個室などの差額ベッド代が病院によっては高額となるケースがあるので、全体を引き上げていると言えるかもしれません。割合として一番多いのが、1万円から1万5,000円未満なので、このあたりの金額を想定するといいでしょう。
仮に1日の入院費用を1万5,000円として30日間入院した場合はトータルで45万円になります。高額療養費制度は保険適用の治療費のみが対象となるので、食事代や差額ベッド代などを考えると医療保険の加入や貯蓄などで準備をしておく必要があるでしょう。
医療保険で備えられるか
長期入院となるケースは、精神疾患や認知症などが多く、これらを給付の対象としている保険は多くありません。また、特約で保障の範囲を広げ、カバーできる場合もありますが、保険料は通常より高くなってしまいます。
さらに1入院での限度日数を60日間としている保険が多く、こうした保険では2ヵ月以上の入院には対応できません。1入院とは同一の傷病を原因とする入院のことで、退院後180日経たずに、同じ病気で再度入院をすると1回の入院と見なされます。
例えば、60日間入院をした後退院し、3ヵ月後に再び同じ病気で60日間入院しても、1入院と見なされ、最初の入院で限度日数に達してしまうため、2回目の入院では給付がありません。
最初のデータにあったように、年々入院日数は短期化しており、その代わり、入退院を繰り返すケースは増えています。こうしたニーズに一般的な保険では対応できないことになります。
医療保険よりも所得補償保険
他にも医療保険ではカバーできない問題があります。大抵の医療保険は入院や手術をした場合に給付金を受け取ることができます。つまり通院では保険は役に立たないということです。うつ病や精神疾患によって病院にかかりながら自宅療養をしている場合、医療保険は使えない上に就業不能となるため、収入が途絶えてしまいます。会社員であれば、傷病手当金がありますが、自営業者の場合、無収入となってしまいます。そうした状況をカバーするのが、所得保障保険や就業不能保険です。
医療費の場合は、高額療養費制度があるため、支払えなくなるほど高額になる心配はあまりありません。それよりも働けなくなることのダメージの方が大きいと言えます。傷病手当金がもらえないケースでは、所得補償保険や就業不能保険でリスクに備えましょう。
長期入院となるケースは少ないとは言え、もしもそうなってしまった場合は、家計に及ぼすダメージは計り知れません。貯蓄に励む、保険で不測の事態に備えるなど、元気な今から考えておきましょう。
(※本ページに記載されている情報は2019年11月17日時点のものです)